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《初の春秋連覇》國學院大は「あと一歩」の呪縛をどう解いたのか? 勝負師・鳥山監督が野球を考え直した井村雅代の指導法
text by
上原伸一Shinichi Uehara
photograph byShinichi Uehara
posted2021/11/30 06:00
東都大リーグ春秋連覇を達成した國學院大・鳥山監督。先日の明治神宮大会では初優勝を達成する中央学院大に敗れたものの、準決勝まで駒を進めた
手腕も評価されている。「戦国東都」の洗礼を浴び、優勝した翌シーズンに「2部」に降格する経験もしたが、12年秋に1部に復帰してからは、1部の優勢勢力であり続けている。
また、プロには修徳高の監督時代を含めると、計13人送り出している。今季、2年連続最優秀中継ぎ投手となり、ヤクルトの日本一に貢献した清水昇も教え子だ。今年のドラフトでは福永奨(4年/横浜高)がオリックスから3位指名を受け、川村啓真(4年/日本文理高)が西武育成4位で指名された。
こうした実績から高校球児の進学先としての人気も高く、部員には大阪桐蔭高や横浜高など、甲子園優勝の経験を持つ「名門」の出身者も多い。
「全員が伸びていく土壌」
鳥山監督が重視している人間教育も一目置かれている。OBは「野球選手である前に、人としてどうあるべきか教えてもらった」と口を揃える。
鳥山監督は「毎年部員が約100人いますが、その1人1人と向き合い、全員が伸びていく土壌を作っています。全員にいい影響を与えることができれば、社会に出た時に1人1人がいい影響の輪を広げてくれると思います」と語る。
人間教育の根底には子供の頃から受けてきた道徳教育があるという。
「鳥山家は『モラロジー』(道徳科学)の影響を強く受けている一族でしてね。僕も小学時代からよく勉強会に参加してました。コーチとしても仕えた竹田総監督が肝としている人間学に共鳴したのもそのためでしょう」
もっとも、実績、指導の両面で認められてはいたものの、自身は満足していなかった。「“いい指導者”で終わってはいけないと」。もともと根っからの負けず嫌い。「人間性が取り柄のチームを作ろうとしているわけではありません」。現在の泰然自若なベンチでの姿からは想像が難しいが、國學院大卒業後すぐに就任したコーチの時代は、三塁コーチスボックスでも闘志を前面に出していた。
「指導では2つのことを心がけています。1つは選手がそうなりたい方向に導くこと。もう1つは、本人が気付いていない可能性を引き出すことです。ずっとこの2つをやってきたつもりですが、そこに勝つこと、優勝することをプラスしないと深みが出てこないと思っています」