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体重50kg以下の“ガリガリ少年”が琉球で歩んだ格闘人生 「やり続けてよかった…」砂辺光久が語るRIZIN沖縄大会の意義
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao / Mitsuhisa Sunabe
posted2021/11/28 11:01
砂辺光久の現在と、ガリガリだった高校時代の写真。レスリングの世界では目立つ存在ではなかったが、格闘技にかける情熱は本物だった
40代対決でも“懐メロ”感は一切なし
東京から見ると、沖縄は地方の中では総合格闘技やキックボクシングのジムや道場が多い印象だ。しかしながら現地で活動する関係者によれば、沖縄でプロの格闘技といえばボクシングを指す。
今回筆者が名護を訪れたときの話だ。バスターミナルから現地のキックボクシングジムを訪れる際、そのジムの代表から「タクシーに乗ったら、『◯◯のボクシングジムへ』と伝えてください。沖縄ではなぜかジムはみんなボクシングだと思われている」という説明を受けた。砂辺にとって、今回のRIZIN沖縄進出は現地の市井の人々に総合格闘技を知ってもらう絶好の機会だった。
しかも、対戦相手はグリーンボーイ時代に辛酸を嘗めさせられた前田吉朗で、18年ぶりの再戦だった。砂辺が42歳ならば、前田は40歳。ややもすると、“懐メロ”的になりかねないマッチメイクだったが、そうさせなかったところにふたりの心意気とスキルがあった。
前田が左フックをフェイントにタックルを仕掛けテイクダウン。背後からスリーパーを狙うと、砂辺は即座に立ち上がる。お互い下から関節技を仕掛ける場面になっても、長時間こう着することはなかった。
グラウンドで下になると、前田は足を最大限に伸ばし、砂辺をペチペチと蹴り続けた。初めて見る攻撃だった。前田は「あんなのは練習でもしたことがない」と打ち明ける。
「頭の中で『やってみたらできるんちゃうか』と思ったので、やってみた感じですね」
筆者の目には18年の流れを走馬灯のように感じさせる展開だったが、砂辺はそれだけではよしとしなかった。最終ラウンドのラスト30秒になると、スタンドでのパンチの打ち合いを仕掛けた。即座に呼応する前田。リスクを恐れずに殴り合うふたりのベテランの漢気に、場内は大いに盛り上がった。
「2~3発殴られて、(地元の砂辺に)華をもたせてやろうかなと思いました。どっちみちこの試合は俺が勝つと思ったし、打ち負けることもないと思っていました」