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父が輝いた、あの神宮で…元ヤクルト度会博文の長男・基輝が13年ぶりに戻る“大舞台”「お父さんに似て思いきりが良い」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2021/11/11 11:04
横浜市長杯の優勝に貢献した中央学院大学・度会基輝(4年)。11月20日に開幕する明治神宮大会に出場する
大学は父と同じ中央学院大に進学。1年生から試合に出場し、2年春からは不動のレギュラーとして活躍。2年春と3年秋には千葉県大学リーグの首位打者を獲得した。しかし今春に「あと1勝」から連敗してリーグ優勝を逃すなど全国大会出場には届かずにいた。
それでも今秋、大学4年間の成長を「打撃の幅が広がりました」と話すように広角に長打や短打を場面に応じて打っていき打率.419。リーグ4位で、父と並ぶ「首位打者3回」には惜しくも届かなかったが、開幕4戦1勝3敗からの大逆転優勝の立役者の1人となった。
さらに中央学院大として19年ぶり3回目の明治神宮大会出場を目指した横浜市長杯でも、広角に安打を放ち何度も得点に絡んで勝利に貢献。菅原悦郎監督は「ここぞの場面で大振りもしないし絶対的な信頼を置いています」と頼もしさに目を細めた。
横浜高で活躍した弟、病に倒れた母
この4年間もさまざまな出来事があった。弟・隆輝は横浜高で甲子園に出場するなど活躍したが、昨秋はドラフト指名漏れ。それでもその悔しさを糧に、高卒1年目ながら強豪・ENEOSでレギュラーを張る。「弟の活躍に対する悔しさは一切なく、2人揃って活躍するのが一番の目標。お互い高め合いながら頑張ってきました」と大きな刺激を受けた。
また、皆が明るい度会家の中でも一番の元気印だった母の祥子(さちこ)さんが、一昨年の12月にくも膜下出血で倒れ救急搬送。最悪の事態も覚悟したというが、幸い後遺症も無く、今は再び元気に仕事と息子たちの応援に励んでいる。だが基輝の中で、価値観の大きく変わる出来事だったと振り返る。
「“あんな元気な人でも倒れるんだ”と驚きましたし、人生何があるか分からないので一瞬、一瞬を一生懸命生きないといけないと感じました。僕らが結果を出すことで、これまでの母がしてきた大変な思いも“やってきて良かったな”と報われるでしょうし、親孝行をより意識するようになりました」