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日ハムスカウト部長が明かす“大谷翔平秘話”「突然の筋肉増量で栗山前監督がびっくり」「クリスマスイブも野球」
text by
島沢優子Yuko Shimazawa
photograph byNanae Suzuki
posted2021/11/19 11:03
リーグ最優秀選手(MVP)に選出された大谷翔平。01年のイチロー氏受賞以来10年ぶりの快挙となった
大渕 ファイターズで1年目のオフに、筑波大(野球部監督の)川村卓さんから「大谷が来ることになっているんですけど」ってメールが来たことがあって。確か同じ高校の仲間が筑波にいたのもあったのですが、当然川村さんがいろんな野球の解析とか研究をしているという情報も社会に出ていましたし、18歳の子がそういった情報を掴んで、しかも大学の指導者に直接聞きに行くという行動をなかなかとらないと思います。高卒1年目から自分で考えて、学びを掴みに行くなんていう選手は、彼が初めてでした。
――探究心ですね。近年、教育の世界では「探究」がキーワードなんです。何でだろう?これはどうしたらそうなるんだろう?って突き詰めていくことで成長が生まれる。その土台が「好き」という気持ちや「ワクワク感」だと言われています。
栗山監督もびっくり「なんでこんなに筋肉つけた?」
大渕 大谷そのものですね。その探求心というスイッチがずっと入っている状態です。
2年目のスプリングトレーニングだったかな。筋力トレーニングをかなりやり込んだようで、僕らが目を見張るほど筋肉質な体になって帰ってきた。そのとき、確か栗山(英樹)さんは怒ったと記憶しています。「なんでこんなに(筋肉を)つけてきたんだ」とおっしゃっていました。でも、それを彼はにこやかに聞いていた。後で聞いたら、その年の彼のテーマみたいなものが「筋肉をつけてみる」だった。自分のプランの中で、短期・中期・長期的に常にいろいろやりたいことがあったようです。
「技術力」だけではなく「活かす方法を探す力」が違う
――「探究の引き出し」が多い。トライ&エラーを繰り返しながら進む。それもひとつの、成長し続ける力でしょう。
大渕 彼を見ていると、技術や柔軟性とか、他のパワーヒッターにない部分が長けていることに気づかされます。例えば140メートル飛ばすにしても、パワーだけでなく、培った技術としなやかさで飛ばしている。柔軟性、巧緻性でしょうか。彼は、技術とか柔軟性で補っている。もしくは、掛け合わせている、と言えばいいでしょうか。パワー自体が他のメジャーリーガーに少し足らなくても、掛け合わせるスキルが高ければ、その上を行ける。そういう面で勝負できるんだなというのが今季は特に感じられました。
――ピッチングにしても、フォームの修正、可動域の拡大等々、自分自身と向き合って突き詰めていく作業が必要です。
大渕 そういうことです。さらに言えば、それらは、すべて自分の体と対話しながら身につけるものです。パワーっていうのは、ある意味、汗をかけば身につく。ところが、パワーの伝え方というか、持っているパワーを発揮する方法はまた別物。そこを探求する力が彼は凄まじい。