Sports Graphic Number SpecialBACK NUMBER
[チームメイトが選ぶ]俺たちのベストSHO-TIME トラウト「私が言ったことを本当にやりやがった」
posted2021/11/19 07:06
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
右足のふくらはぎを痛め、5月17日のインディアンス戦を最後に戦列を離れたチームの大黒柱マイク・トラウト。彼はシーズン終盤まで復帰を諦めず、懸命にリハビリを重ねていた。その間、本拠地の試合では必ずベンチ入りし、声援を送り続けていた。通算310本塁打、MVPに輝くこと3度のメジャー屈指のスラッガー。そんな彼が語った今季の大谷のベストシーンは、ふたりが共有した特別な時間だった。
「どの試合だったかは忘れてしまったんだが、最初の打席はドン詰まりでバットが折れてしまったんだ。その時、私はショウにこう言ったんだ。『もし相手が外角に投げてきたら、うちの(左翼にある)ブルペンへ打ち込め。もし彼らが内角に投げてきたら、ライトフィールドへ打て。そして、もし彼らがチェンジアップや緩い変化球を投げてきたら、センターフィールドに打ち返せ』とね。そうしたら、ショウは次の打席で本当に内角の速球を右中間席に運んでしまったんだ。そして、その次の打席では外寄りの速球を左翼に打ち返したんだ。あれには本当に参ったよ(笑)」
驚きとともに、目をパチクリとさせながら、トラウトが回顧した試合は7月2日の本拠地でのオリオールズ戦だった。彼の記憶通り、第1打席は左腕キーガン・エイキンの内角速球にバットが折れ二飛に倒れた。その後、トラウトのアドバイスを受けた大谷は第2打席で同じくエイキンの92マイル(約148km)の内角速球を右中間スタンドへ豪快に叩き込んだ。そして、続く第3打席は右腕ディロン・テイトの96マイル(約154km)の外角シンカーを本当にブルペンへと運んでしまった。トラウトと大谷の会話を知ってか知らずか、ベンチ前ではいつものようにホセ・イグレシアスが両手を上げて大喜び。ダグアウトに戻ってからも仲良しのデービッド・フレッチャーが、真相を知っているかのような意味深な笑みを浮かべ大谷と何やら盛り上がっている。この本塁打は今季節目の30号。だが、これにはまだ続きもあった。