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「ちゃんと卒業したのは3年間で4人」ヤンチャ集団だった高校が決勝戦で大阪桐蔭と対戦するまで…この10年で何が? 

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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photograph bySankei Shimbun

posted2021/11/05 11:03

「ちゃんと卒業したのは3年間で4人」ヤンチャ集団だった高校が決勝戦で大阪桐蔭と対戦するまで…この10年で何が?<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

左腕・森下を擁する京都国際に勝利し、近畿大会・準決勝進出を喜ぶ和歌山東ナイン。決勝戦では大阪桐蔭に敗れたが、今後の成長が期待できる快進撃だった

 何より、米原監督のざっくばらんな人柄が、高校生を引き付けているのかもしれない。時には冗談を交えて、選手たちを叱咤激励する。投打で傑出した能力を持つ選手がいる訳ではないが、この秋も“魂の野球”の大切さを説きながら、選手らと歩み、考えながらひとつずつ勝ち進んできた。

 今夏は智弁和歌山の甲子園制覇に加え、市立和歌山の小園健太はDeNA、松川虎生はロッテからドラフト会議で共に1位指名を受けるなど、和歌山の高校野球は嬉しいトピックが盛りだくさんだった。

「今回、近畿大会で準優勝できたことは自分たちの力ではないよ、と子供らに言うています。今年は智弁和歌山の優勝や市和歌山のドラフトのことを思うと、和歌山の年やったのかな……と。その流れにウチも乗せてもらっただけ。だから(決勝の翌日も)休まずにミーティングをやりました。コイツら、準優勝言うてたら調子に乗りますから」

驚かされた大阪桐蔭の行動

 ただ、公式戦で並み居る強豪校と対戦したことは何よりの糧となっている。近畿大会の準決勝のことだ。第2試合で試合予定だった和歌山東は、三塁側ベンチ後方で開始を待ち、第1試合を終えた大阪桐蔭とベンチを交代する時に米原監督が目についたことがあった。

「大阪桐蔭の選手がベンチを空けるのが、ものすごく速かったんです。素早い、無駄のない動きを見て、そういう姿勢を見習わないといけないと話しました。大阪桐蔭の戦力がすごいことは分かっていること。智弁和歌山の戦力の凄さをウチの選手は普段から見ているので、プレーに驚きは少なかったようですが、試合では声掛けのタイミングやしっかり準備、行動ができるチームを見て何かを感じて欲しいです。野球は勝つためだけにやるものではない。これからの人生にも生きていくものなので」

 ようやく聖地への扉の前に立った秋。私学、公立と古豪がひしめく和歌山からまた新しい学校が、令和の球史に“その時”を刻もうとしている。

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