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クラシコ4連敗のバルサに突き付けられた現実 「未来への種を蒔いていた」クーマン解任は本当に正しい決断なのか 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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posted2021/10/29 17:04

クラシコ4連敗のバルサに突き付けられた現実 「未来への種を蒔いていた」クーマン解任は本当に正しい決断なのか<Number Web> photograph by Getty Images

アンス・ファティ、ガビら若手への期待は大きかったが、レアル・マドリーに完敗。指揮官交代に踏み切ったバルサに未来はあるか

クーマンの後任にはシャビの名前も

 メッシも、セルヒオ・ラモスもいない新時代のクラシコで主役となったのは、メッシから「10番」を託された若武者ファティではなく、S・ラモスの「4番」を背負った百戦錬磨のアラバだった。そして、スタメンに6人のカンテラーノを並べたバルサに引導を渡したのは、マドリーのスタメンでただ1人のカンテラーノ、L・バスケスだった。

 この事実が、現在の両者が置かれた状況を如実に物語っていただろう。

 それでも財政が火の車のバルサは、若手を重用しながら前へ進むしかない。補強もままならない現状では、育てながら勝とうなどと高望みをするべきではないのだ。目先の勝利ではなく、2年後、3年後の勝利を──。ファティにガビ、そして今回のクラシコはケガで欠場となったが、ペドリという改革の旗頭もいるのだから。

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「ディテールが勝敗を分けた。ただ、我々がマドリーに劣っていないことは示せたし、あの先制のチャンス(25分にデストがフリーで外したシュート)を決めていれば、すべてが変わっていただろう」

 しかし、そう強がっていたクーマン監督は、3日後のラージョ・バジェカーノ戦の敗戦が決定打となり、ついに解任される。後任候補には、現在カタールのアル・サッドで監督を務めるシャビ、Bチームのセルジ・バルファン監督など、OBの名前が挙がっている。

バルサをさらに深い闇へと引きずり込むものは……

 ラポルタ会長はあっさりと続投の約束を反故にしたが、はたしてこの決定は正しかったのだろうか。シーズン序盤の性急な監督交代は、一時的なカンフル剤になったとしても、チームにさらなる混乱を招きかねない。とりわけシャビのような切り札に、火中の栗を拾わせて頓挫したした場合、将来に大きな禍根を残す危険性さえある。

 思い起こせば、かつてカルレス・プジョルやシャビ、そしてアンドレス・イニエスタらをカンテラから引き上げ、トップデビューさせたのは、クーマンと同じオランダ人指揮官のルイス・ファンハールだった。強引にチームの「オランダ化」を進め、サポーターの憎悪の対象となった嫌われ者は、その政権後期に暗黒時代を招いた一方で、しかしのちの黄金時代に繋がる種もしっかりと蒔いていた。

 クーマンもまた、この困難な状況の中で、嫌われ者になることを恐れずに未来への種を蒔いていた。少なくとも今シーズンいっぱいは、どんなに落ちぶれようともクーマンの手による改革を信じ、あるいは心中する覚悟を決めて、耐え忍ぶしかなかったのではないか。

 明確なビジョンも覚悟も信念も持たないフロントの迷走が、バルサをさらに深い暗闇へと引きずり込むような気がしてならない。

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