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クラシコ4連敗のバルサに突き付けられた現実 「未来への種を蒔いていた」クーマン解任は本当に正しい決断なのか
posted2021/10/29 17:04
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
期待感は、少なからずあった。
何かが起こるのではないかという予感の根拠は、「若さ」だった。トップチームデビューからわずか数試合でスペイン代表にまで上り詰めた17歳の新星ガビが、あるいは退団したリオネル・メッシから「10番」を受け継ぎ、長引く膝のケガから11カ月ぶりに戦列に戻った18歳の神童アンス・ファティが、若いエネルギーを爆発させ、勝利の使者となってくれるのではないかという淡い期待だ。
スタメンには6人のカンテラ出身者が
現地時間10月24日に行われたラ・リーガ第10節の伝統の一戦、エル・クラシコ。ここで宿敵レアル・マドリーを叩けば、一気に波に乗れる。確かにスタートダッシュには失敗した今シーズンのバルセロナだが、前節のバレンシア戦に快勝し、ピリッとしない内容だったとはいえ、チャンピオンズリーグでも4日前のディナモ・キエフ戦で待望の初勝利を飾った。流れは悪くない──。入場制限が解除され、およそ8万6000人の観衆が詰めかけたカンプ・ノウのバルサ・サポーターも、きっと同じ想いを抱いていたはずだ。
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しかし、メッシのいないクラシコで突き付けられたのは、「若さ」への過信がいかに危険であるかという警告だった。バルセロニスタがすがりつこうとしていたのは、クモの糸のようなか細い希望に過ぎなかった。
この日、バルサのスタメンにはガビとファティに加え、CBのエリク・ガルシア(20歳)、右SBに配置されたオスカル・ミンゲサ(22歳)、そしてチームの重鎮であるジェラール・ピケ、セルヒオ・ブスケッツと6人のカンテラ出身者が名を連ねた。さらに、本来は右SBながら、このところ右ウイングとして評価を高めているセルジーニョ・デスト(20歳)、すっかり中盤の柱に成長を遂げたフレンキー・デヨング(24歳)といった外様のレギュラーも、まだ20代前半の若さである。
放漫経営のツケを払う形の、いわば後ろ向きの選択とはいえ、こうしたカンテラーノを基盤とする大胆な若返り策を、好意的に受け止める者も少なくはなかった。一時は解任を確実視されていたロナルド・クーマン監督に対する批判も、ジョアン・ラポルタ会長の続投明言以降、結果が伴ったことで、次第に沈静化しつつあった。
左サイドからの崩しを自ら放棄した
ポジティブな空気をまとった新生バルサは、立ち上がりからマドリー陣内に圧力をかける。3トップの左に入ったメンフィス・デパイと左SBのジョルディ・アルバを起点に、マドリーの右サイドを重点的に攻めた。
ただ、クーマン采配に疑問を投げかけるとすれば、バレンシア戦でも好連係を見せ、相手の脅威となっていたジョルディ、ガビ、そしてファティによる左サイドのトライアングルを解体したことだった。インサイドハーフは左にF・デヨング、右にガビと左右を入れ替え、トップには当たりに強くキープ力もあるデパイではなく、ファティ。ストロングポイントである左サイドからの崩しを、自ら放棄した印象が否めなかった。