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クラシコ4連敗のバルサに突き付けられた現実 「未来への種を蒔いていた」クーマン解任は本当に正しい決断なのか 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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posted2021/10/29 17:04

クラシコ4連敗のバルサに突き付けられた現実 「未来への種を蒔いていた」クーマン解任は本当に正しい決断なのか<Number Web> photograph by Getty Images

アンス・ファティ、ガビら若手への期待は大きかったが、レアル・マドリーに完敗。指揮官交代に踏み切ったバルサに未来はあるか

 敵将のカルロ・アンチェロッティも、実にしたたかだった。ルーカス・バスケスの守備に不安が残る自陣右サイドを狙われるのは承知の上。むしろ誘い水を向けるようにバルサをこちらサイドにおびき寄せ、ボール奪取からの素早いカウンターに徹した。

 アンチェロッティがこうした割り切った戦い方を選択できたのも、ビニシウス・ジュニオールという特別な存在があったからだろう。今シーズン絶好調の若きスピードスターは、現時点でヨーロッパの五指に入るウインガーと言って差し支えない。自陣右サイドの渋滞を横目に、序盤から何度となくロングフィードに飛び出しては、悠然と広大な逆サイドのスペースを駆け抜け、ミンゲサを手玉に取った。

バルサの若さを封じ込めたマドリーの老練

 32分の先制点も、やはりカウンターからだった。デパイのミスを見逃さず、ボールを奪ったCBのダビド・アラバが、一度左のビニシウスに預けて猛然と前線に駆け上がる。ミンゲサをかわしたビニシウスから、右サイドのロドリゴにサイドチェンジのボールが渡る。カリム・ベンゼマの動きを囮に、ロドリゴがフリーのアラバに斜めのラストパス。バイエルン・ミュンヘン時代からバルサに対して苦手意識がなかったオーストリア代表キャプテンは、E・ガルシアに間合いを詰める時間も与えずに左足を振り抜いた。

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 クラシコデビュー戦のアラバに先制を許したバルサは、ここから反撃に出るも、結局前半の枠内シュートはゼロ。フィリペ・コウチーニョをトップ下に投入し、ファティを本来の左に戻した後半になって一時的にリズムが生まれるが、サイドでボールを握った後の攻め手に工夫がなく、中央をしっかりと固めたマドリーに対して、可能性の低いクロスを放り込むしか手立てがなくなっていく。

 バルサの若さを封じ込めたのは、マドリーの老練だった。とりわけルカ・モドリッチ、トニ・クロース、カゼミロのベテラントリオで構成された中盤センターは盤石で、巧みに罠を仕掛けてボールを絡め取り、鋭いカウンターに繋げた。立ち上がりにクロースから挨拶代わりの激しいタックルを見舞われたガビも、臆することなくアグレッシブに戦ったが、次第に存在感をかき消されている。

 アディショナルタイムの93分、高い位置でのボール奪取からパワープレーで前線に上げていたピケを経由し、左のデパイにボールが渡る。しかし、折り返しに飛び込んだピケとコウチーニョが重なり、どちらもシュートを打てずにチャンスを潰すと、そのクリアボールをシンプルに繋がれ、最後はL・バスケスに決定的な2点目を奪われる。

 97分にセルヒオ・アグエロが意地の一発を返したが、結局通算247回目のクラシコは、アウェーのマドリーが2-1で制した。スコア以上に成熟度の差を見せつけられた完敗。1965年以来となるクラシコ4連敗の屈辱を味わったバルサは、これで暫定ながら9位に沈んだ。

【次ページ】 クーマンの後任にはシャビの名前も

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