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自身の子供時代は「恐怖心しかなかった」…元日本代表・益子直美が「監督が怒ってはいけない大会」を主催し続ける理由 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2021/10/28 11:00

自身の子供時代は「恐怖心しかなかった」…元日本代表・益子直美が「監督が怒ってはいけない大会」を主催し続ける理由<Number Web> photograph by Getty Images

本来スポーツは楽しむものだが、厳しい指導を受けることでそのスポーツが嫌いになってしまう子は少なくない

1人ずつ子供の良いところを聞いてみると……

 子供たちが思い切りバレーボールを楽しんで、夢中で取り組めるように。そんな思いでスタートした『監督が怒ってはいけない大会』は今では全国に広がり、リピーターとなるチームも多いという。

 第1回大会が開催された福岡では、すでに6度行われ、参加チームは確実に増えてきている。1回体験しただけではわからないことは多い。すぐに効果が出るわけではないから、辛抱強く開催し、リピーターを増やすのは大事なことだ。

「子供たちが『また出たい!』と言うのが大きいですね。大会のときはいろいろな先生や指導者の方々と、ゆっくり話をする機会を作っているんです。『うちのチームの子たちはネガティブでやる気がない』と言っていた方がいたんですが、『そうですか? 子供たちすごく頑張っていたじゃないですか。先生、良い機会だから1人ずつ良いところを教えてください』と聞いてみたんです。

『良いところなんてないんだよ』と言うので、『なんでもいいんですよ』と食い下がると、しぶしぶ付き合ってくれて。『あの子はブロックの手がいいかな』『あいつはレシーブがまあまあいい』と。最後に1人、バレーを始めて3カ月の2年生の男の子がいたんですが、『ないない、始めたばっかりで球拾いしかしてないから』と言うので、『本当ですか? 取り組み方とかでもいいんですよ』と粘ってみたんですね。

そうしたら『うーーーん』って考えたあと、『あー……』って深いため息つかれてから、『そうだよなぁ、毎日練習来てるよ、一度も休まずに』と言ってくれたんです。

 当たり前のことかもしれないけど、それって当たり前のことじゃないんです。その方は、そこに気づかれた。それってすごい第一歩だと思うんです。最後には『これまでこうした機会がなかったから、良いところを何も見ていなかった。もっと上手くさせてあげたいという気持ちしかなかったから、できないところを教えようとしてばかりで、できていたところを認めてあげていなかった』と、ご自身のこれまでを振り返っていました。結局、1時間くらい話し込んだんですが、ああ、お話しできてよかったなぁって」

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