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「30世紀まで抜かれないと思ってた」真中満もドキドキ…“新・代打の神様”川端慎吾が元指揮官の記録に挑む《ヤクルト優勝》 

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真中満

真中満Mitsuru Manaka

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photograph byNanae Suzuki

posted2021/10/27 17:03

「30世紀まで抜かれないと思ってた」真中満もドキドキ…“新・代打の神様”川端慎吾が元指揮官の記録に挑む《ヤクルト優勝》<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

前回ヤクルトが優勝した2015年には首位打者と最多安打のタイトルを獲得。WBSCプレミア12の日本代表にも選出された

 ただ今季の川端について言っておきたいのは、僕が記録を達成したときとは明らかに状況が違うということ。僕のときはチームが最下位だったので、序盤の3、4回でも代打として出番が回ってくることがよくありました。一方の川端は優勝争いをする中で積み上げたもので、勝負がかかった大事な場面での起用が多い。相手は大抵セットアッパーかクローザーですし、僕よりもはるかに大変な状況で残した数字であることは認めざるを得ません。ファンの期待感や重圧もまったく違いますから、これはもう手放しで称えるべきでしょう。

 現役時代も、もちろん監督としてもよく知っていますし、ここ数年、腰の状態が悪くて苦労したことを思うとね……。「川端になら記録を抜かれても本望」というのは、いや、ちょっと綺麗事すぎますかね(笑)。

相手バッテリーを心理的に追い込む“初球打ち”

 バッティングに関してしばしば“天才”と称される川端ですが、彼の打撃技術を解説するなら、追い込まれたときの対応に優れたものがあると思っています。もちろんバッターは追い込まれるとアベレージは下がりますし、川端もその例に漏れないわけですが、それでも「不利なカウントからどう打つか」に3割打てる一流とそれ以外の差が出る。並の選手は追い込まれると速いボールをマークして変化球に対応する一方で、川端クラスになると変化球をマークしながら速球に対応できる。その順応性が極めて高いので、追い込まれても速球をファールで粘りつつ、甘い変化球を芯で捉えてヒットにできるんでしょうね。

 加えて今の川端を見ていると、初球からどんどん打っていって、相手がカウントを悪くしたときは確実に芯で捉えている印象があります。早いカウントから打っていくというのは代打業の基本です。相手は「川端は初球から打ってくる」と思って、厳しいコースを狙う。結果的にボールが先行すれば、さらに川端のペースになる。初球打ちをバッテリーに警戒させ、有利なカウントで勝負をするというスタイルが確立されています。

 川端のバッティングスタイルが確立されてきたのは、レギュラーとして試合に出るようになった2012年ごろでしょうか。一般的にどんなタイプが“天才”なのかはわかりませんが、川端は必死に努力を重ねてきた選手で、決して才能だけでやっているわけではない。川端に比べたら、僕の現役時代の方がよっぽど練習していませんでしたね(笑)。

 もうひとつ付け加えるなら、スイングスピードの速さも特筆に値します。鋭いスイングができるから、0コンマ何秒ぶんだけ球を引き寄せて見極めることができる。自分のポイントまで引きつけて打てるだけの自信があるからこそできる技です。首位打者を取った2015年と比べると、もしかしたらスイングスピードそのものは落ちているかもしれません。ただそれは川端自身も把握していて、全盛期の体のキレはなくても、今の状態に合わせたバッティングにしっかりと変換できているから結果を残せているんじゃないでしょうか。

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