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他球団スカウトの“後悔”「タイガースはうまいことやったな~」ドラフト5日後に完全試合の“ドラ3左腕”…ドラフトウラ話《阪神編》
posted2021/10/27 17:05
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Sankei Shimbun
ドラフト会議から5日経った10月16日、新潟医療福祉大・桐敷拓馬投手(178cm90kg・左投左打・本庄東高)が、リーグ戦の平成国際大戦でパーフェクトゲームを記録してみせた。
6連続奪三振を含む19三振を奪って、外野に飛ばされた打球はフライが3本だけ。2年秋のリーグ戦で、同じ平成国際大を相手にマークしたリーグ新記録の「1試合18奪三振」を、自ら更新する立派な内容の快挙だった。
これだけのピッチングをやってのける快腕だけに、ドラフト前には有力指名候補にも挙げられて、会議では、阪神が3位に指名していた。
スカウト「スライダーが弱いとプロで急に苦労する」
「今になって考えれば、うまいことやったなー、タイガースって、思いますね」
あるスカウトが残念がるのは、ドラフト前のリーグ戦を思い返してのことだ。
桐敷の投球、ドラフト前はこれが見納めかも……そんなギリギリの試合だった。
その日は他にも、やはりドラフト候補の大型遊撃手・中山誠吾(白鴎大・190cm99kg・右投左打、西武6位指名)や、桐敷投手の同僚で長身サウスポーの佐藤琢磨(新潟医療福祉大・183cm85kg・左投左打、ソフトバンク育成13位)も出場メンバーに入っていたので、ネット裏の「スカウト人口密度」は70%を超えていたのではないだろうか。
私はその日、たまたまそのスカウトと隣り合った席で観戦していた。
スカウトの方たちはもちろん「仕事」で来ているので、邪魔をしてはいけない。話しかけるのは最小限にとどめ、グラウンドに展開されるプレーに集中していると、横からつぶやきが聞こえてきた。
「桐敷って、スライダー、こんなによかったかなぁ……」
どういう意味か、尋ねてみた。