酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
《異例の戦力外通告》が続く終盤戦と浅尾拓也を抜いたヤクルト3年目ドラ1・清水昇の日本新「48ホールド」 〈週刊セパ記録〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2021/10/19 11:02
日本新記録となる48ホールドをマークしたヤクルトの清水昇
<シーズンホールド数5傑>※清水は10月18日時点
1.清水昇(ヤ)2021年 48H/69試合
2.浅尾拓也(中)2010年 47H/72試合
3.藤川球児(神)2005年 46H/80試合
3.久保田智之(神)2007年 46H/90試合
5.浅尾拓也(中)2011年 45H/79試合
5.増井浩俊(日)2012年 45H/73試合
浅尾拓也は日本福祉大から大学・社会人ドラフト3巡目で中日に入団し、2年目から救援投手として活躍。4年目の2010年にNPB記録の47ホールドをマークし、翌2011年も45ホールドを記録した。中日の連覇に貢献し、2011年にはMVPに選ばれた。これまでクローザーがMVPに選ばれることはあったが、中継ぎ投手(セットアッパー)が選ばれたのは史上初。セットアッパーのステイタスを向上させたと言われる。
清水はその記録を11年ぶりに抜いた。
國學院大學から2018年ドラフト1位でヤクルトに入団。1年目は当初、先発で起用されたものの途中から救援に転向。2年目の2020年に30ホールドを記録して「最優秀中継ぎ」のタイトルを獲得した。清水はこの時点で未勝利。未勝利でのタイトルホルダーは史上初だった。
浅尾らの時代よりも“分業が進んだ”証明とは
NPBでは「最優秀中継ぎ」のタイトルは、ホールドではなく「ホールド+救援勝利」のホールドポイントを表彰対象としている。2020年の清水はたまたま「30ホールド+0勝=30ホールドポイント」でタイトルを獲得したが、歴代のホールドポイント5傑はこうなる。
1.浅尾拓也(中)2010年 59(47H+12勝)/72試合
2.久保田智之(神)2007年 55(46H+9勝)/90試合
3.藤川球児(神)2005年 53(46H+7勝)/80試合
4.浅尾拓也(中)2011年 52(45H+7勝)/79試合
5.清水昇(ヤ)2021年 51(48H+3勝)/69試合
2010年の浅尾はNPB記録を更新する47ホールドに加え、リーグ6位タイの12勝を挙げる空前の活躍だった。2010年の浅尾は72試合で80.1回を投げた。イニングまたぎも多く勝利に絡むことが多かったのだ。
今季の清水は69試合で64.2回。救援勝利は3勝。イニングまたぎは5月21日のDeNA戦だけ。浅尾の時代よりもさらに分業が進んで、現代の一線級のセットアッパーはほぼ「1イニング限定」になっている。
清水の2020年の防御率は3.54、2021年は2.51、47ホールドを記録した2010年の浅尾拓也が1.68、45ホールドの2011年は0.41だったのと比べると見劣りする。
しかし清水は今季、自責点1でホールドを記録した試合が6ある。もちろん無失点で切り抜けるのがベストなのは間違いないが、清水は失点しても大崩れせず、リードを維持したままクローザーにつなぐことができる投手だと言える。より実戦的で、ピンチを切り抜ける力のある投手だと言えよう。