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《異例の戦力外通告》が続く終盤戦と浅尾拓也を抜いたヤクルト3年目ドラ1・清水昇の日本新「48ホールド」 〈週刊セパ記録〉

posted2021/10/19 11:02

 
《異例の戦力外通告》が続く終盤戦と浅尾拓也を抜いたヤクルト3年目ドラ1・清水昇の日本新「48ホールド」 〈週刊セパ記録〉<Number Web> photograph by Kyodo News

日本新記録となる48ホールドをマークしたヤクルトの清水昇

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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 今季の第1次戦力外通告期間は10月4日から25日、第2次はクライマックスシリーズの全日程終了後に設定されている。

 この期間に戦力外通告するのは、10月11日にドラフト会議が設定されたことと関係がある。プロ野球の支配下選手は「70人」と決められている。新しい選手の入団が決まればその分、在籍する選手を退団させるか育成登録にしなければならない。そのために戦力外通告がこの期間に設定されているのだ。

 主力級だった選手は、戦力外通告期間の前に自ら引退発表することが多いが、これは功績が大きい選手のプライドに配慮してのものだ。

一軍で出場、フェニックスLに選出されながら戦力外も

 ただ今季は昨年に続いて新型コロナ禍でペナントレースの日程がずれ込んでいるために、中日の武田健吾のように一軍の試合に出場しているのに戦力外通告を受ける選手も出てきている。

 また、宮崎で例年行われている教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」も行われている。これも従来はシーズン終了後の開催だが、昨年に続きペナントレースと並行して行われている。フェニックス・リーグは本来「来季以降、有望な選手を実戦で鍛える」ために行うはずだが、阪神の奥山皓太のようにフェニックス・リーグのメンバーに選出されながら、戦力外通告を告げられる選手も出てきた。

 各球団ではチームの陣容を考える「編成」と、選手を強化する「育成」とは別の部署になっている。当然連絡はとってはいるが、試合に出ている選手に戦力外通告が行われるのは、「編成」と「育成」の方針に相違があったと考えられる。

今年のトライアウトは例年より重要性アップ?

 戦力外通告を受けた選手の中には、そのまま引退する選手、育成契約に切り替えて再度挑戦する選手、現役続行を目指して活動する選手がいる。

 2019年までは、戦力外通告を受ける選手の中には事前に他球団への移籍が内定している選手がいた。そういう選手は終盤の二軍戦に出て他球団の関係者の前でプレーして、まだ活躍できることを証明することもあった。12球団合同トライアウトはそうした交渉ができなかった選手の「最後のチャンス」になることが多かったが、今年はペナントレースが行われている最中のため、首脳陣がこうした選手を十分にチェックできなかったと思われる。

 そのため現役続行を望む選手の中で他球団への「内定者」は例年より少ないと言われ、12月8日に予定されている12球団合同トライアウトの重要性は例年より高まると思われる。

 こうしてみるとNPBは厳しい世界のようだが、MLBでは試合に出ている選手がDFA(日本でいう戦力外)になって退団するのは日常茶飯事だ。選手はそうした突然の“人事異動”にもめげず出場機会を求めてトライアルを続ける。こうした人材の「流動性」の高さがMLBの活力を高めている側面がある。

 NPBも次第にドラスティックな人事が行われるようになっているが、選手もこれをポジティブに受け止めるべきだろう。

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