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「室温は低いのに藤井聡太三冠、豊島将之竜王が汗を…」 観る将マンガ家が体感して震えた竜王戦対局場の異空間《イラスト》 

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千田純生

千田純生JUNSEI CHIDA

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photograph by日本将棋連盟/Junsei Chida

posted2021/10/15 17:01

「室温は低いのに藤井聡太三冠、豊島将之竜王が汗を…」 観る将マンガ家が体感して震えた竜王戦対局場の異空間《イラスト》<Number Web> photograph by 日本将棋連盟/Junsei Chida

藤井聡太三冠(左)と豊島将之竜王が対局した竜王戦第1局。イラストの数々は関連記事からもご覧になれます!

(2)棋士が「どこにでもいる」という非日常な3日間

 観戦プログラムに参加してみて感じたのは、棋士の方々や関係者の「将棋を様々な角度から楽しんでほしい」という思いでした。

 エンタメ性が強いもので言えば、藤井三冠が頼む「カワイイおやつコレクション」で、今回の「紫芋モンブラン・ハロウィンオータムシーズンコレクション」も堪能することができました(ランチも美味しかった……)。それと、佐藤九段が率先して豊島竜王と藤井三冠の特大パネルとともに、笑顔で写真撮影に応じているのも、ほっこりするというか(笑)。

 感染症対策を講じた中でも、棋士と直接触れ合える機会の多さには驚かされるばかりでした。僕たち夫妻が愛するJリーグでも各クラブのOBのトークショーなどがありますが、棋士同士の話が聞ける「竜王戦トーク」や「おさらい解説」などはサッカーと同じく楽しめるものでした。

 貞升南女流二段や山田久美女流四段の聞き手ぶりはアナウンサーのようですし、佐藤九段、中村修九段、鈴木大介九段、松尾歩八段、三枚堂達也七段、高見泰地七段の誰もが話がお上手だなとの印象を受けました。いわゆる「言語化」する能力に、棋士の人たちは長けているのかも……とも。

 逆に言えば、当たり前のように棋士がウロウロしている様子に、こっちがド緊張してしまう場面が連続でした。

 例えば廊下の椅子に座っている佐藤会長が静かに予定表を見ていたり、お手洗いに行ったら隣が松尾八段だったり。そして高見七段が歩いていたので妻に「話しかけるチャンスだよ」と言われたのに、女性ファンの多さにオッサンの僕はモジモジして声をかけられず……名刺いっぱい持っていったんですけど(苦笑)、今度また機会があれば、ぜひ棋士の方とコミュニケーションを取ってみたいと強く思います。

藤井三冠、豊島竜王が「間近にいる」衝撃

 そして何が一番驚いたって、対局者が“普通に間近にいた”ことでした。

 封じ手見学が終わった時に能楽堂出口でスタッフさんと話していたら、豊島竜王がスタスタと後ろを通り過ぎていったり、2日目の朝見学のために集合していたら、エレベーターからひょっこり藤井三冠が1人で現れて、歩いていったり……。サッカーでたとえるなら、大事な代表戦のハーフタイム中に、大迫勇也選手や久保建英選手の間近にいるようなものじゃないか――と思うと、より一層震えました(笑)。

 将棋の参加型イベントについてもぜひ触れておきたいです。

 僕たち夫婦はご想像通り、棋力はほぼ皆無です。それでもわかりやすく、なおかつ深い解説で「棋士はこのようなことを脳内で考えているのか」と感心するばかりでしたし、「次の一手」予想会は抽選で「豊島竜王のサイン色紙を筆頭に藤井三冠やトークショー参加の棋士、女流棋士のサイン、そして竜王戦グッズがもらえるという豪華なものでした。案の定外れましたが、こういった「将棋に参加してもらおう」というコーナーがあるからこそ、初心者の僕たちも気軽に参加できるのだなとうれしく思いました。

 そして、こういったイベントに目を輝かせて参加していた多くの子供たちの姿を見て、将棋界の未来は明るいのだろうと心から嬉しくなりました。今からでも遅くないから将棋、覚えようかな(笑)。

【次ページ】 異空間の中でも、2人はさらに別の空間にいた

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