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「室温は低いのに藤井聡太三冠、豊島将之竜王が汗を…」 観る将マンガ家が体感して震えた竜王戦対局場の異空間《イラスト》
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![千田純生](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/8/1/-/img_816c54efc96d83c9dbfcf11eba3eb81025221.jpg)
千田純生JUNSEI CHIDA
photograph by日本将棋連盟/Junsei Chida
posted2021/10/15 17:01
![「室温は低いのに藤井聡太三冠、豊島将之竜王が汗を…」 観る将マンガ家が体感して震えた竜王戦対局場の異空間《イラスト》<Number Web> photograph by 日本将棋連盟/Junsei Chida](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/9/d/700/img_9d06bbafafc85ef8f3d479248b738fb6257666.jpg)
藤井聡太三冠(左)と豊島将之竜王が対局した竜王戦第1局。イラストの数々は関連記事からもご覧になれます!
(3)対局場は、現実を超えた異空間だった
前夜祭や各イベントだけでも満足だったんですが……この「竜王戦プレミアム」、メーンイベントは「対局観戦」でした。そもそも棋士の対局姿を見られるだけでも貴重なのに、大事な大事な竜王戦の開幕局。どのような空気感なのか全く想像できないまま、能楽堂の客席へと着席しました。
その空間は、まさに現実を超えた世界に飲み込まれたようでした。
能楽堂は、誰もが一切音を立てない沈黙の世界。僕たちは緊張で固まる中で、立会人の中村九段と会長の佐藤九段、記録係が正面に座り、先に対局場に登場した豊島竜王からは、あふれ出るオーラが。続いて藤井三冠が入場してきて、まさに張り詰めた空気感が充満していました。
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藤井三冠も豊島竜王も映像を通して見ていると、柔らかな表情を浮かべたり、かわいらしさや親しみを感じるお二方ですが、対局場で見たのは「頭脳の格闘技」に挑む勝負師の姿でした。
藤井三冠と豊島竜王の対局姿は、二頭身キャラクターで描けない。
鋭く、そして透き通るような視線で盤面を眺める様子を見た結果、このようなイラストになりました。
1日目は17時から封じ手まで1時間もの長時間、対局の現場にいたわけですが、これほどまで無音の中だからこそ、2人の頭脳は究極のレベルで機能しているのだな……と想像しました。
そして「棋は対話なり」という格言がありますが、この空間にい続けると、お互いの考えが共鳴することがあると記事で読みました。まるでマンガのような世界ですが、それは実際に起こりえることなのだろうとも実感しました。
異空間の中でも、2人はさらに別の空間にいた
究極の戦いの中で、もう1つ異空間だなと思ったのは「温度」でした。室温が低めに設定されていたようで、半袖では寒いかなと感じるほどでした。しかし対局者の2人は羽織を脱ぎ、手汗をハンカチで拭き、汗ふきシートで顔を拭っていた姿が印象的でした。
舞台の熱気は、観覧席とは全く別の世界。異空間の中、2人はまた別の空間で戦っている――。いつもは中継などで評価値を見ながらワイワイと楽しんでいるわけですが、あの静謐な空間は、今後将棋を見る際に絶対に忘れないでおこうと思う、唯一無二の体験でした。
そんな熱量をヒシヒシと感じながら、藤井三冠の先勝で終わった第1局会場を後にしました。ただただ圧倒された雰囲気の中で、妻がひそかに思っていたことが。
「藤井三冠のスラッと一直線に伸びた背筋、すべりたいと思っちゃった……」
観る将としてお恥ずかしい限りですが、真剣勝負から柔らかい楽しみ方まで、将棋のすべてが詰まっていました……またぜひ、どこかの将棋イベントに行ってみようとの思いを強くした3日間でした!(構成/茂野聡士)
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。
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