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「クイック攻撃を完全に封じている…」30年前、《リードブロック》という革命を日本に持ち込んだ“アメリカ人のお爺ちゃん”とは?
 

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市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

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photograph byRyosuke Menju/JMPA

posted2021/10/15 11:02

「クイック攻撃を完全に封じている…」30年前、《リードブロック》という革命を日本に持ち込んだ“アメリカ人のお爺ちゃん”とは?<Number Web> photograph by Ryosuke Menju/JMPA

現在では世界の主流となった「リードブロック」。人ではなく、ボールを追って飛ぶ戦術システムは、30年前に海を渡って日本へやってきた

 しかし寺廻の指揮官としての将来性を買って監督に据えた会社側も、そう簡単にやめさせるわけにはいかない。

「とにかく、まだ若いんだからがんばってみなさいよ」

 寺廻の説得にかかる。

「そこで、私は『では1つ希望を聞いてほしい』と言ったんです。今までと同じことをしていても優勝できるというイメージがわかない。ですから続ける条件として、この選手たちを勝たせるために改めて一から勉強をさせてほしいと会社にお願いしました」

全盛期アメリカの3枚のブロック

 当時の男子バレーボールはアメリカチームの全盛期だった。ロサンゼルス、ソウル大会とオリンピックで連覇を達成。今年8月の東京オリンピックではアメリカ女子代表を優勝に導いたカーチ・キライ監督が主力選手として活躍していた時代だ。

 もともと海外チームの試合を見ることを習慣化していた寺廻は、アメリカ対ロシアの試合を見ていたときに、アメリカチームの“あること”に気づく。ロシアのクイックにアメリカの3枚ブロックがしつこく付いて行くのだ。当時の日本であればスパイカー1人に対しブロックは1枚、ないしはノーマークになりがちなクイック攻撃を完全に封じ込めている。

 そのブロック戦略の秘密がどこにあるのか知りたい。寺廻はすぐさま海外事情に詳しい知人を伝って、アメリカチームのブレーン的存在である人物を探り当てた。

 それがユタ州の大学でバレーボール部の監督をしているカール・マクガウンだった。

 マクガウンはナショナルチームには直接は関わっていなかったものの、ナショナルチームを支援するグループに在籍していた。データを生かす手段をチームに指導するなど、裏方として力を貸していた。寺廻はさっそくマクガウンに連絡を取り、アメリカに向かった。5月初旬からのオフシーズンを利用して3週間、アメリカに滞在し、バレーボールを学ぶことになった。

「あまりにも素晴らしいブロックシステムでした。私は大きな衝撃を受けて、急きょ、国際電話をかけてNECの担当者に『マクガウンさんを日本に呼びたい』と直訴しました。私が見よう見まねで教えても、伝わらないことのほうが多い。だったら直接、選手たちに教えてもらったほうがいいと判断したんです」

 とんとん拍子で話が進み、寺廻が帰国する同じ便で、マクガウンもともに来日する運びとなった。

【次ページ】 選手たちはどう受け止めたのか?

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