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「目から鱗でした」常勝チームを築いたNECブルーロケッツが“未知の戦術”《リードブロック》を迷いなく導入できたワケ

posted2021/10/15 11:03

 
「目から鱗でした」常勝チームを築いたNECブルーロケッツが“未知の戦術”《リードブロック》を迷いなく導入できたワケ<Number Web> photograph by KYODO

第25回日本リーグで優勝したNECブルーロケッツ。リードブロックシステムがチームを変えた

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市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

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引き続き、「リードブロック」の歴史を紐解いた証言記事をお楽しみください。全2回の後編(前編へ)

 突如、日本行きが決まり、初めて目にするチームのブロック指導を依頼されたマクガウンだったが、その指導にはとても熱意があり、論理的だった。「どうしてもチームを強くしたい」という寺廻太の熱意が伝わったのだろう。

 前編でも触れたが、まずは全選手のブロックのステップを統一し、ステップを学んだ上で相手の攻撃に対応する動きを習得しようとマクガウンコーチは選手に説明した。

 ステップの次に徹底したのが目の配り方だった。味方がサーブを打ち、相手のレセプションが上がる。そこから、まずはボール、その次はセッター、そしてボール、スパイカー。この順番で見る練習を幾度も繰り返した。順番を守ることで、徐々に相手の攻撃に対し3名のブロックが対応できるようになった。その練習を繰り返しつつ、手の出し方や、後衛を守るレシーブ陣との連係など、実現すべきことをフェーズ1、フェーズ2、フェーズ3と段階的に分け、フェーズ1ができたら、次は2と、練習内容は計画的に進んでいった。

 寺廻は語る。

「それまで我々が教わってきたブロックというのは、向こうのクイックが速いから速く跳びなさいとか、ここの攻撃はないだろうから、放っておいて他のポジションの攻撃に張りなさいという指導が多く、日本の選手はそれ以外の指導を受けたことがなかったわけです。私がアメリカに行ったときに、いちばん最初に見せられたのがソ連のサビンのクイックに対して、アメリカのリードブロックが3枚追いついた動画でした。『なぜこの攻撃に3枚つくかわかるか?』と聞かれてもわからない。マクガウンさんは『これはボールに対して動いているだけだ』『これがブロックなんだよ』と言いました。そしてNECのビデオを見せると『きみたちは相手が跳ばないところでブロックに跳んでいる』と。説明を受けて納得しましたね。

 けっきょく相手がアタックを打つから、そこに壁を作ってシャットアウトをしたり、打つコースを限定するのがブロックの基本的な考え方じゃないですか。でも、速い攻撃や時間差攻撃が出てきたことによって、ヤマを張って打ちもしない場所にブロックが跳んでしまうようになった。となるとブロックは勘や読みがすべてになってしまう。そういう風に変わってしまっていたバレーを、もう一度、“打ってくるからそこを防ぐ”という基本に戻らせてくれたのがリードブロックだったのです」

 楊成太も語る。

「マクガウンさんが来るまで『あの選手はブロックの能力が高い』とか『あの選手は背が低いからしょうがないよ』と個人の力だと位置付けている部分が多かった。それを『組織としてこう動くんだ』と明確にしてくれたおかげで、選手全員が妥協を許さなくなりました。

 それまでは、ブロックに自信がない人は諦めてしまう傾向があった。でもブロックに自信があった私は『なんで諦めちゃうのかな』『やり方はいろいろあるのにな』とずっと歯がゆかったんです。それを個人の能力を上げるというよりは、組織としてシステム化して取り組むことで、得意、不得意は関係なくチームのブロック力が上がると教えてくれた。目から鱗が落ちる思いでしたね」

【次ページ】 ミドルブロッカー大竹の証言

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