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「ありがとう日本」…チャーター便を飛ばしてまで1レース限りのスペシャルカラーを実現させた、レッドブル・ホンダの愛と情熱 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2021/10/13 06:01

「ありがとう日本」…チャーター便を飛ばしてまで1レース限りのスペシャルカラーを実現させた、レッドブル・ホンダの愛と情熱<Number Web> photograph by Getty Images

日の丸カラーのボディ側面とリアウイングに「ありがとう」と描かれた、スペシャルカラーリングのレッドブル・ホンダRB16B

 そんなとき、10月3日が決勝日となっていたトルコGPが、本来日本GPが行われるはずだった10月10日にスライド。山本は「このタイミングしかない」と、ホーナーに再び打診した。はじめはトルコGPで白いマシンを走らせることに懐疑的だったホーナーだったが、「ホンダ最後の年、鈴鹿のファンを中心にみんなで盛り上がってほしい」という山本の熱意にヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)が賛同し、白いマシンとレーシングスーツが復活した。

 だが、一旦中止になっただけに、実現は容易ではなかった。というのも、今回の企画はデモラン用のマシンを白くするというものではなく、実際にレースを走らせる2台しかないマシンのカラーリングを変えるというアイディアだったからだ。しかも、トルコGPの前に行われるロシアGPはレッドブルのデザインオフィスがあるイギリスから遠く、時間と経費がかかる。それでもこのプロジェクトを可能にしたのは、ホーナーの「なんとかする」という決断力と、レッドブル関係者の努力と技術力だった。

すべては感謝を伝えるために

 本来であれば、ロシアGPを終えたマシンなどの機材は、トルコGPが行われるイスタンブールへFOM(F1統括団体)が特別に用意したチャーター便で空輸されるはずだった。しかし、レッドブルはそれとは別に自分たちでチャーター便を用意して、ロシアからイギリス、そしてイギリスからトルコへとパーツを空輸した。また単純に上塗りしたのではマシンが重くなるため、特殊な技術で軽量化を実現。パフォーマンスに支障をきたさない程度の重量変更にとどめた。

 特別にカラーリングされたパーツがすべてイスタンブールに到着し、サーキットのガレージで組み上がったのは10月6日(水)の夜だった。レッドブルがそこまでして自らのカラーリングを変えたのは、心の底からホンダと、日本GPを楽しみにしていたファンへ感謝を伝えたかったから。リアウイングに書かれた「ありがとう」の文字には、そんな思いが込められていた。

 その思いを背負って戦ったレッドブル・ホンダの2台は優勝できなかったが、フェルスタッペンのチームメートであるセルジオ・ペレスが、同僚とチャンピオン争いを繰り広げるルイス・ハミルトン(メルセデス)と手に汗握るバトルを披露。「ありがとう」の文字が入ったリアウイングが何度も何度も国際映像に映し出され、ペレスが3位、フェルスタッペンは2位で表彰台に上がった。

 その走りを遠く日本から見守っていたファンたちこそ、こう思ったに違いない。

「レッドブル・ホンダ、ありがとう」と。

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