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9年ぶり勝利のマクラーレンで、日本人エンジニア今井弘が見据える常勝軍団復活への道筋<テニス新女王ラドゥカヌも興奮⁉>
posted2021/09/16 06:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
イタリアGP決勝前夜、マクラーレンの2人のドライバー、ダニエル・リカルドとランド・ノリスはなかなか眠れずにいた。
それは、日中に行われたスプリント予選の結果、リカルドが2番グリッド、ノリスが3番グリッドと、決勝レースで優勝を狙える位置からスタートすることだけが理由ではない(トップだったメルセデスのバルテリ・ボッタスのエンジン交換ペナルティにより、繰り上げ)。その夜、2人はそれぞれの部屋でテニスの全米オープン女子決勝を見ていたからでもあった。
「なかなかテレビを消すことができなくてね。結局、最後まで見て、寝たのは1時15分ごろだったよ」(リカルド)
「いままでテニスの試合を最初から最後まで見たことは一度もなかったけど、思っていたよりもずっと楽しくてあっという間だった。彼女の年齢であの大舞台に立つというのは、ある意味では私にも通じるものがある。彼女があの舞台で見せた自信と能力、そして世界の強豪たちを相手にして成し遂げたプレーには本当に勇気づけられたよ」(ノリス)
9月11日、アメリカ・ニューヨークで行われた全米オープン・テニスの女子シングルスは、グランドスラム史上初となるノーシード同士の決勝となり、18歳のエマ・ラドゥカヌが優勝した。
F1好きな18歳の新女王とマクラーレンの縁
そのラドゥカヌにはマクラーレンとの結びつきがあった。今年のF1イギリスGPに主催者から招待されたラドゥカヌが、マクラーレンのスーパーカーに乗ってそのスピード感を楽しんだことがきっかけだ。F1という華やかな世界を堪能したラドゥカヌは「やっぱりF1は最高」とSNSに投稿し、F1ファンを公言。そのうえで好きなF1ドライバーとして名前を挙げたのが、リカルドだった。また、ラドゥカヌと同じイギリス人で、ラドゥカヌより1歳年上の19歳でF1にデビューしたノリスにとっても、ラドゥカヌの全米オープンの活躍は大いに刺激になった。
その翌日の決勝で、リカルドとノリスはラドゥカヌはじめ世界中のモータースポーツファンを感動させる素晴らしいレースを披露した。