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〈出雲駅伝〉逆転劇もなし…初出場の東京国際大学が5強に圧勝できた「ヴィンセントだけじゃない」4つの勝因
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2021/10/11 17:01
2年ぶりの開催となった出雲駅伝。優勝したのは、初出場の東京国際大学だった
だが、「少しでもヴィンセントに負担をかけないことが我々の目標だった」と大志田監督が話した通り、ヴィンセント頼みを脱却できたことが、今回の圧勝劇の最大の要因。まさに総合力で掴んだ初優勝だった。
とはいえ、改めてヴィンセントの存在感がいかに際立っているかを印象付けたレースでもあった。
箱根で世界5位を叩き出す“異次元の留学生ランナー”
これまで数多くの留学生ランナーが大学駅伝を席巻してきたが、その中でもヴィンセントの力は突出している。1年時の箱根駅伝デビューから鮮烈だった。3区21.4kmを59分25秒で走破し、それまでの区間記録を2分1秒も更新。単純比較はできないものの、ハーフマラソンの記録に換算すると約58分34秒で、世界歴代5位(当時)相当の快走を披露した。まさに世界のトップクラスの実力を持った選手なのだ。そして、昨季の箱根駅伝でも、前年に相澤晃(東洋大→旭化成)が樹立した2区の区間記録をわずか1年で塗り替えた。ヴィンセントの勢いはとどまることを知らない。
今年5月には5000mで日本学生記録(13分15秒15)を樹立し、ロードばかりか、トラックでも強さを発揮している。そして、今夏はケニアに帰国し、標高2100mのケリチョのキャンプに参加し、ロードレースシーズンに備えた。
今回の出雲駅伝では、優勝を目指すチームは、どうしても東国大との差を意識せざるをえなかった。そのため、後手に回った時に、焦りが生じるのも仕方がないことだ。
一方で、東国大の選手にとっては、多少のビハインドであればヴィンセントがカバーしてくれるので、思い切ってレースを進めることができたといえる。3区の丹所が、突っ込んで入ったのに、その勢いを緩めることがなかったのも、そのためだった。
ヴィンセントがアンカーに待っていることの心理的な効果は、敵味方ともに、かなり大きなものだっただろう。