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〈出雲駅伝〉逆転劇もなし…初出場の東京国際大学が5強に圧勝できた「ヴィンセントだけじゃない」4つの勝因
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2021/10/11 17:01
2年ぶりの開催となった出雲駅伝。優勝したのは、初出場の東京国際大学だった
自らの予想をも覆し、丹所は先頭に立つだけでなく、大きな貯金を作った。
ヴィンセントを擁する東国大からいかにリードを奪うかが他校のポイントだっただけに、丹所の快走は、他校の計算を大きく狂わせた。
流れを作った“1区3位”のスタートダッシュ成功
もう1つ、東京国際大にとって大きかったのは、1区を走った山谷昌也(3年)の復活だ。
昨季までは10000mの自己記録で丹所を上回っており、「山谷は本当に強い。山谷がいるので、自分はまだエースではない」と丹所も認めるほどの選手。しかし、昨季の箱根駅伝は直前のケガでエントリーメンバーから外れ、今季も前半戦は元気な姿をなかなか見せられずにいた。ようやく夏合宿から復調し、9月には5000mで13分49秒47の自己記録をマークするなどぐんぐん調子を上げてきていた。
山谷は、過去に全日本大学駅伝で1区を二度任されているが、区間14位、13位と力を発揮できずにいた。
「今まで駅伝で1区に使ってもあまり良くなかったが、もう1回、彼に賭けたいと思っていた。期待に応えてくれてうまく走ってくれました」(大志田監督)
3度目の正直。今回は、トップと5秒差の区間3位と好走し、スターターとして見事な役割を果たした。
「駅伝って流れなんだろうなって思います。山谷が先頭と互角で走ったので、常にトップグループの中に入れたことで、選手は安心できますし、普段のトレーニングをレースで表現できたのかなと思います」(大志田監督)
先頭、もしくは先頭に近い位置でレースを進められたことで、東国大の選手たちは気持ちに余裕を持つことができた。今回、2位以下の大学は乱高下が大きかったが、東京国際大の選手の区間順位を見ると、1区山谷が区間3位、2区佐藤榛紀(1年)が区間4位、3区丹所が区間2位、4区白井勇佑(1年)が区間5位、5区宗像聖(3年)が区間3位、そして、ヴィンセントが区間賞と、大崩れする選手はなく、安定して力を発揮している。これが大志田監督の言う“駅伝の流れに乗ることができた”という証拠でもある。
そういう意味では、1区の山谷が走り終えた時点で、東京国際大の優勝はかなり濃厚なものとなっていたと言えるかもしれない。そして、3区丹所の走りが決定打になり、ヴィンセントがダメ押しし、思わぬ大差での優勝となった。
強豪校の思わぬ苦戦と「脱・ヴィンセント」
優勝候補筆頭に挙げられていた駒澤大学が、エース格の一人、鈴木芽吹(2年)を右脚大腿骨の疲労骨折で欠き、後手に回ったことや、10月としては異常といえる30度超の暑さで有力選手が持ちタイム通りの力を発揮できず、スローな展開になったこと(優勝タイムは、現行のコースになってから最も遅かった)など、様々な外的要因も、東京国際大にとってはプラスに作用した。