酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
阪神・佐藤輝明の59打席連続無安打とロッテ和田康士朗が狙う「独立L→育成→盗塁王」 成績の背景を見ると…〈週刊セパ記録〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKiichi Matsumoto/Sankei Shimbun
posted2021/10/05 11:03
阪神の佐藤輝明とロッテの和田康士朗。優勝争いとともに記録という面で2人の終盤戦にも注目が集まっている
以下は2019年以降、15盗塁以上を記録した育成上がりの選手。
2019年
周東佑京(ソ)25盗塁(パ5位)2017年育成2位
増田大輝(巨)15盗塁(セ6位)2015年育成1位
2020年
周東佑京(ソ)50盗塁(パ1位)
和田康士朗(ロ)23盗塁(パ3位)2017年育成1位
増田大輝(巨)23盗塁(セ2位)
2021年
和田康士朗(ロ)24盗塁(パ1位タイ)
周東佑京(ソ)21盗塁(パ3位)
松原聖弥(巨)15盗塁(セ5位)2016年育成5位
これまで盗塁王は、各チームのリードオフマンが競り合うことが多かった。日本ハムの西川遥輝(盗塁王3回)、阪神の近本光司(同2回)らがその代表格だ。彼らは多くの打席に立って数多く出塁する中で盗塁を稼ぐが、ここに挙げた選手たちは、主として「代走」で起用され、盗塁を記録してきた。
彼らは一塁に出ると、かなり高い確率で走る。「アウトにならない代走」ではなく「次の塁を奪う走りのスペシャリスト」として起用されているのだ。
韋駄天ブームを作った周東と共通する長足の進歩
これまでも足だけで飯を食う「韋駄天」はいないわけではなかった。
古くは1966年、ほぼ代走だけで32盗塁、盗塁王をとった阪急の山本公士、近くは巨人の代走のスペシャリストとして通算228盗塁した鈴木尚広がそれだ。
2人ともに無名選手として入団し、足で頭角を現した。
最近のこうした「韋駄天ブーム」の先駆けはソフトバンクの周東佑京だ。東農大北海道オホーツクから2017年育成2位で入団し、2年目の2019年に支配下登録され、オフにはプレミア12のメンバーに選ばれ侍ジャパンのユニフォームを着る。2020年には13試合連続盗塁のNPB記録を樹立。そして規定打席未満では2人目の「50盗塁」でタイトルを獲得した。
周東の型破りの活躍が、無名の選手に勇気を与えて「足で勝負する選手」が増えたのだ。
ロッテの和田康士朗はBCリーグ富山から2017年育成1位で入団。当初は走塁技術が未熟で盗塁死が多かったが、長足の進歩を見せ2020年は23盗塁、そして今季はここまで24盗塁で、西武の源田壮亮と並び1位だ。
源田が107試合で24盗塁なのに対し、和田は88試合で24盗塁。源田が6盗塁死なのに対し、和田は3盗塁死。韋駄天選手には「盗塁成功率の高さ」は必須だが、与えられたチャンスを確実にものにする技術、勝負強さを持っているのだ。