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〈引退〉語り継がれる中日・山井大介の日本シリーズ“完全試合未遂” 「もう一度あの日に戻れるとしたら?」と問われて明かした答えは…
posted2021/10/07 06:00
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
JIJI PRESS
秋は野球界にとって別れの季節だ。
「ハンカチ王子」の重荷を背負い、度重なる故障に苦しんだ日本ハムの斎藤佑樹が現役引退を表明し、1型糖尿病と闘い続けた阪神の岩田稔は号泣会見で区切りをつけた。中日では球界最年長投手の山井大介(43歳)と外野手の藤井淳志(40歳)が引退を決意。5日に終えた藤井につづき、山井は7日、会見に臨み、同時に13日のヤクルト戦(バンテリンドーム)で引退セレモニーを行う。
「特例措置」で中日に入団。14年にはノーヒットノーランを達成
山井は神戸弘陵高から奈良産大、河合楽器を経てドラフト6巡目指名で2002年に中日に入団した。本来、大卒で社会人野球に進んだ選手は2年後にドラフト対象となるが、河合楽器の休部に伴う特例措置で、1年目での指名となった。20年間の現役生活で335試合に投げ、62勝70敗20セーブ。13年6月28日のDeNA戦(横浜)では、史上77人目のノーヒットノーランを達成している。翌14年には13勝で最多勝、.722で最高勝率の二冠に輝いている。
また、グラウンド外ではそのノーヒットノーランの記念グッズの売り上げを義援活動に充てたことが縁となり、東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市を毎年訪れていた(新型コロナの感染拡大で、昨年オフからは行けていない)。現地では野球教室を行ったり、児童養護施設を訪問したりと地道な活動を続けてきた。
あの日は「谷繁さんのリードが手に取るようにわかった」
ここ2年は一軍で勝ち星のなかった山井だが、ファンがこの右腕から真っ先に思い浮かべるのは若き日のサングラス姿と登場曲からの「ウルトラセブン」。そして「あの試合」になるだろう。07年11月1日。日本ハムとの日本シリーズ第5戦(ナゴヤドーム)である。53年ぶりの日本一に王手をかけて、山井は先発マウンドに上がった。快投の予兆は試合前から芽生えていた。
「(6年後の)ノーヒットノーランをやったときとは全く違っていたんです。ブルペンでストライクが入らなくって、どうやって抑えようかと思っていたのがノーヒットノーラン。そうではなく、スライダーひとつ取っても、思ったところにコントロールできたのがあの日本シリーズ。フワフワしたというか、不思議な感覚でした」