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ワイナルドゥムの穴は埋めていないリバプールだが…クロップは現有戦力の充実を強調 奮闘中の南野拓実にも「心配する必要はない」
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/10/03 17:02
リバプールで3シーズン目を迎えた南野。世代交代を迎えるチームにおいて主力となっていけるか
主力6選手と長期の契約延長
そう、やはりコロナの影響は甚大だ。さしものリバプールも入場料収入が大幅にダウンし、そのマイナスを補うには選手を売却するしかない。
ところが、リバプールはうまく整理できなかった。
ワイナルドゥムはフリートランスファー、リヨンに去ったジェルダン・シャキリは600万ユーロ(約7億8000万円)、フルアムに移籍したハリー・ウィルソンは1600万ユーロ(約21億円)。大きなプラスにはならなかった。
しかも、昨年の夏はディオゴ・ジョタに4470万ユーロ(約58億円)、今年はコナテに4000万ユーロ(約52億円)を使っている。本拠アンフィールドの拡張工事は総額6000万ポンド(約90億円)のビッグプロジェクトだ。
こうした情勢を踏まえると、今夏のリバプールは正しく動いたといって差し支えない。「過去3シーズンの収支が赤字でなければいい」というファイナンシャル・フェアプレーのルールをギリギリでかわすチェルシー、補強費に関しては限りなくアウトに近いがなぜか重罰を科されないシティのような例もあるとはいえ、リバプールのプランは至極真っ当だった。
11年前、破産寸前のリバプールを救った『フェンウェイ・スポーツ・グループ』(FSG)は、今回も危ない橋を渡らずに無難な道を選択した。ファンダイク、アリソン、ファビーニョ、トレント・アレクサンダー・アーノルド、アンドリュー・ロバートソン、ヘンダーソンと、主力6選手と長期の契約延長に至った事実からも、新戦力より組織の熟成を優先したことは明らかだ。
南野はパフォーマンスも表情も活き活き
ただ、一朝一夕ですべて好転するはずがなく、しばらくの間は売却によって得られる資金が強化の基本となる(前述)。好むと好まざるとに関わらず、モハメド・サラーやサディオ・マネの契約更新が疑問視されているのは、リバプールの経済的事情によるものだ。ともにリバプールを愛し、心底クロップに惚れているとしても、どんな人生にも別れは必ずやって来る。
ミルナーは35歳になった。近い将来、さしもの鉄人もユニホームを脱ぐ。新旧交代は差し迫った現実的な問題であり、今後はロバートソンとアレクサンダー・アーノルドが軸だ。前線はジョタがエース候補で、ここに南野拓実が絡んでくると日本人としては非常に楽しい。