欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ワイナルドゥムの穴は埋めていないリバプールだが…クロップは現有戦力の充実を強調 奮闘中の南野拓実にも「心配する必要はない」
posted2021/10/03 17:02
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
隣の芝生は、さぞかし青かったに違いない。
マンチェスター・ユナイテッドはジェイドン・サンチョとラファエル・バランに加え、クリスティアーノ・ロナウドまで獲得した。
マンチェスター・シティはジャック・グリーリッシュに、チェルシーはロメル・ルカクに1億ポンド(約150億円)近い投資を惜しまず、アーセナルに至っては総額1億5680万ポンド(約235億円)を強化に費やしている。
ワイナルドゥムの穴は埋められず
そんななか、リバプールは静かな夏を過ごした。
5月にイブラヒマ・コナテと合意に至っていたとはいえ、今夏の市場には1ポンドも投下していない。パリ・サンジェルマンに去ったジョルジニオ・ワイナルドゥムの穴を埋めるため、一線級のMFを補強すべきだったが、手つかずに終わっている。
「ファビーニョ、ジェイムズ・ミルナー、ジョーダン・ヘンダーソン、チアゴ・アルカンタラ、ナビ・ケイタ、カーティス・ジョーンズ、アレックス・オクスレイド・チェンバレン……。優秀な選手が揃っている。なぜ中盤を強化しなくちゃいけないんだい?」
ユルゲン・クロップ監督は現有戦力の充実を強調した。
確かにそのとおりだ。中盤の陣容は、質量ともにユナイテッドをはるかに上回る。しかし、直近2シーズンのワイナルドゥムは出色の出来で、ファビーニョ以下の7選手でも穴を埋められるかどうか、大きな疑問符がつく。
ライバルの大盤振る舞いを横目に見ながら、クロップは胸の内でこうつぶやいたに違いない。
「せめてひとり、中盤のタレントが欲しかったな」
クロップも、経営側に補強をリクエストしたはずだ。
ビルヒル・ファンダイク、ジョー・ゴメス、ジョエル・マティプなど、負傷のために昨シーズンを棒に振った主戦センターバックがカムバックするとはいえ、戦力増強を怠ったクラブがプレミアリーグを制した例はほとんどない。
ただ、リバプールは基本的に収入と支出のバランスを考慮し、許容範囲を超えるような巨額を市場に投下しないクラブだ。
また、『スタンダード・チャータード銀行』とのスポンサー契約が2023年6月30日で切れることも、補強を敬遠した要因のひとつだ。4年総額2億2100万ドル(約243億円)もの大金を支援した企業との関係は維持したいが、コロナ禍では銀行の懐にも限界があり、新しいスポンサーを探し出すのも難しい。