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ワイナルドゥムの穴は埋めていないリバプールだが…クロップは現有戦力の充実を強調 奮闘中の南野拓実にも「心配する必要はない」
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/10/03 17:02
リバプールで3シーズン目を迎えた南野。世代交代を迎えるチームにおいて主力となっていけるか
サラーとマネにロベルト・フィルミーノを加えた3トップは世界一の破壊力を有している。南野はその一角を崩せずに悶々としている。
しかし南野は、ノリッチとのリーグカップでは2ゴールを決め、クロップをおおいに喜ばせた。焦らず、ピッチ上で堂々と振る舞っていれば、チャンスは必ずやって来る。アウェイで5-1の圧勝を収めたFCポルト戦(CL第2節)でもマネに代わって66分から出場。パフォーマンスも表情も活き活きしていた。
「何も心配する必要はない」(クロップ)
「彼は常に貴重な戦力」(ペーター・クラビーツ/アシスタントコーチ)
首脳陣の評価は上々だ。構想内に入っていると考えていい。アーセナルに加入した冨安健洋のハイパフォーマンスも、南野のモチベーションを刺激しているに違いない。
常に長期的なプランのもとに経営、強化を進める
補強を控え、主力との契約更新で熟成を図るリバプールに、少し気になる動きがあった。この10年、補強に尽力したスポーツディレクターのマイケル・エドワーズが、今シーズン限りで退団すると伝えられている。
サラー、フィルミーノ、マネ、ファンダイク、ロバートソン、アリソン、ファビーニョなど、現主力の大半がエドワーズのスカウトによるものだ。そうそう、南野もそのひとりである。
イングランドに住む旧知のジャーナリスト数人に確認したところ、エドワーズの決心は固いそうだ。リバプールに加入して10年、異なる風景を見たくなるのは当然の心理であり、ひょっとするとヘッドハンティングか!? だからこそ多くのサポーターが、「一大事」と大騒ぎしているのだろう。
しかし、エドワーズは後継者を育てていた。ジュリアン・ウォードである。
12年、シティからリバプールにやって来たウォードは、主にスペインやポルトガルのスカウトを担当し、その後イングランド国内で優れたタレントを発掘。現在はアシスタント・スポーツディレクターとして、陰になり日向になりエドワーズを支えている。『FSG』のマイケル・ゴードン社長も「ジュリアンに任せておけば大丈夫」と絶賛するほど、内部の評価は非常に高い。
要するにリバプールは、何事においても準備を怠らず、常に長期的なプランのもとに経営、強化を進めていた。コロナに見舞われなければ、数人のビッグネームを獲得できたはずで、前述したアンフィールド改修後の入場料収入を考えれば、ワールドクラスの選手がアンフィールドの魔力に引き寄せられる。
数少ない不安はクロップの去就だろうか。現行の契約は2024年6月末日まで。15年秋の就任から9年となる。プレミアリーグの監督は激務だ。ちょっと休みたくもなるだろう。
いやいや、リバプールなら準備万端。クロップはゼネラルマネジャー、そして新監督を推薦!? アンフィールドの芝生が、やけに青く見えてきた。