審判だけが知っているBACK NUMBER
<私が裁いた名勝負>ジダンが去り際に残した“ひと言”。
text by
セルヒオ・レビンスキーSergio Levinsky
photograph byGetty Images
posted2021/10/05 07:01
オラシオ・エリソンドさん
語り継がれる名勝負をその演者のひとり、審判が振り返る。彼しか知らない新たな景色が見えてくる。
2006年 ドイツW杯 決勝
7月9日/オリンピアシュタディオン
イタリア 1対1(5PK3) フランス
前半7分、この試合が現役最後のジダンがPKを決め、12分後にはCKからマテラッツィが同点弾。以後も両チームが好機を作るがスコアは動かず延長戦へ。後半5分、挑発されたジダンがマテラッツィへの頭突きで一発退場。PK戦で全員が決めたイタリアが、4度目の優勝を果たした。
◇
それまでのW杯では、開幕戦を裁いた主審が決勝を任されることはなかった。だから'06年大会の最初の試合で笛を吹いた私はその後、(グループステージの2試合と)準々決勝を担当した後、ドイツ大会における自分の仕事は終わったと思っていた。