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《10年前のドラフト考察》菅野の入団拒否、広島3連覇への契機、パで目立つ“3位以下”の頑張り…成功した球団は? 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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posted2021/10/01 17:04

《10年前のドラフト考察》菅野の入団拒否、広島3連覇への契機、パで目立つ“3位以下”の頑張り…成功した球団は?<Number Web> photograph by KYODO

日本ハムに1位指名され、記者会見に臨む菅野智之(当時、東海大)

 セ・リーグで目立つのは広島だ。1位野村祐輔、2位菊池涼介を獲得し、16~18年のリーグ3連覇の基礎を作ったドラフトだったと見ていいだろう。12年には鈴木誠也(内野手・二松学舎大付高)、13年の大瀬良大地(投手・九州共立大)、田中広輔(内野手・JR東日本)でチームの骨格を作っていることを見れば、ドラフトの成果がいかにその後のチームの浮沈にかかわるか、ということが如実にわかるだろう。

◆広島東洋カープ(11年ドラフト)
1位 野村祐輔・投手/明大
2位 菊池涼介・内野手/中京学院大
3位 戸田隆矢・投手/樟南高
4位 土生翔平・外野手/早大
育1位 富永一・投手/四国IL・徳島
育2位 中村真崇・外野手/四国IL・香川
育3位 塚田晃平・投手/早大
育4位 三家和真・外野手/市和歌山高

 中日は統一ドラフト(08年~)になってから初めて1位で高校生野手・高橋周平を指名し、3球団競合の末に獲得した。18年以降、超高校級野手の根尾昂(内野手・大阪桐蔭高)、石川昂弥(内野手・東邦高)を2年連続で指名しているが、それまでは即戦力の大学生、社会人を上位で指名するのが中日の定型だった。将来投資とともにきっちり3位に田島慎二を指名したのはその流れに沿った成功例と言える。

 ただ、高橋で気になるのが球団の抜擢の遅さだ。1年目の12年から一軍戦に出場し続けているが、初めてシーズン100試合を果したのはプロ入り7年目の18年。この年の高卒野手と比べても横浜(現DeNA)4位桑原将志(内野手・福知山成美高)は5年目の16年に133試合、日本ハム4位近藤は4年目の15年に129試合出場を果たしているのである。このパターンは現在の根尾らにも見られ、改善してほしい点の1つでもある。

◆中日ドラゴンズ(11年ドラフト)
1位 高橋周平・内野手/東海大甲府高
2位 西川健太郎・投手/星稜高
3位 田島慎二・投手/東海学園大
4位 辻孟彦・投手/日体大
5位 川崎貴弘・投手/津東高
6位 宋相勲・投手/韓国・信一高

「パ高セ低」の偏り

 パ・リーグに比べてセ・リーグは少し反省点が浮かぶ指名が続いた。中日と同じように即戦力投手に向かうことが多かった横浜は9人中、7位選手以外すべて高校生を指名する超意外な指名に舵を切ったが、重要な戦力になっているのは4位桑原の1人だけという低空飛行ぶり。

 横浜だけではない。阪神、巨人、ヤクルトの中で大きな戦力となっているのは巨人2位今村信貴(投手・太成学院大高)、同3位一岡竜司(投手・沖データコンピュータ教育学院)ぐらい。ただ、今村は成功選手への道のりの途上にあり、一岡は通算16勝、83ホールドが人的補償で移籍した広島で挙げたものなので、巨人のドラフトの成果として語ることはできない。

 近年、日本シリーズでセ・リーグの覇者がパ・リーグの覇者に勝ったのは12年の巨人だけ。そういった「パ高セ低」の偏った状況が、この11年のドラフトにも色濃く反映されているように思える。

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