“Mr.ドラフト”の野球日記BACK NUMBER
《10年前のドラフト考察》菅野の入団拒否、広島3連覇への契機、パで目立つ“3位以下”の頑張り…成功した球団は?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKYODO
posted2021/10/01 17:04
日本ハムに1位指名され、記者会見に臨む菅野智之(当時、東海大)
◆東北楽天ゴールデンイーグルス(11年ドラフト)
× 藤岡貴裕・投手/東洋大
1位 武藤好貴・投手/JR北海道
2位 釜田佳直・投手/金沢高
3位 三好匠・投手/九州国際大付高
4位 岡島豪郎・捕手/白鴎大
5位 北川倫太郎・外野手/明徳義塾高
6位 島内宏明・外野手/明大
育1位 神保貴宏・外野手/北海道トランシス
楽天のリストをみると、4位岡島豪郎、6位島内宏明の名前が際立つ。2人はともに筆者が成功野手の目安にしている「通算500安打」を軽くクリアし、島内に至っては今季、打点王を獲る勢いにある。4位、6位という順位でわかるようにそれぞれドラフト前の評価は決して高くなかった。球団の思惑としては「どちらか1人がチームの戦力になってくれればいい」くらいだったかもしれないが、10年経ってみたらチームになくてはならない存在になっている。
菅野智之の強行指名の印象が強いが
◆北海道日本ハムファイターズ(11年ドラフト)
1位 菅野智之・投手/東海大 →拒否
2位 松本剛・内野手/帝京高
3位 石川慎吾・外野手/東大阪大柏原高
4位 近藤健介・捕手/横浜高
5位 森内壽春・投手/JR東日本東北
6位 上沢直之・投手/専大松戸高
7位 大嶋匠・捕手/早大ソフトボール部
この時期、ソフトバンクとリーグ上位争いをすることが多かったのが日本ハムだ。「投手、野手に関係なく、その年のナンバーワン選手を1位で指名する」のがファイターズ流で、この年も巨人入りを熱望する菅野智之を強行指名。抽選で当たりクジを引き当てたが、入団に導くことができなかった。菅野は原辰徳・巨人監督の甥として育った背景や、祖父・貢氏(元東海大監督)の巨人入りへの強い思いもあり、翌12年のドラフトまでの1年間を東海大野球部員として練習に明け暮れ、念願の巨人入りを果たしている。
菅野の件は日ハムにとっては痛手であったが、2位松本剛、3位石川慎吾、4位近藤健介、6位上沢直之の高卒選手たちがいずれも戦力となり、結果的には実りの多いドラフトになった。特に4位近藤と6位上沢はリーグを代表する選手になっている。
高卒選手を育成する手腕にかけてはソフトバンクを凌ぐ勢いにあるのは、メジャーリーグで大活躍する元ファイターズのダルビッシュ有(投手・パドレス)、大谷翔平(投手&野手・エンゼルス)を見ても明らか。“1位の大物”だけでなく、下位指名でもその強みを存分に発揮した。