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なぜ女子プロレス団体スターダムは“日本一”集客できるのか? オーナーが明かした極意と野望〈会員数は1年半で数十倍に〉

posted2021/09/30 11:02

 
なぜ女子プロレス団体スターダムは“日本一”集客できるのか? オーナーが明かした極意と野望〈会員数は1年半で数十倍に〉<Number Web> photograph by Masashi Hara

(左)第13代・現ワールド・オブ・スターダムチャンピオンの林下詩美(右)第15代・現ワンダー・オブ・スターダムチャンピオンの中野たむ

text by

原壮史

原壮史Masashi Hara

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Masashi Hara

 スターダムの勢いが止まらない。今年3月3日に日本武道館大会を成功させた時、木谷高明オーナーは大阪城ホール大会や全米ツアー開催への意欲を見せていたが、その1つが早くも実現する。10月9日、女子プロレスでは26年ぶり、スターダムとしては初進出となる大阪城ホール大会が開催される。

 ライブイベントに未だ強い逆風が吹いている中、攻めの姿勢を貫くのはなぜなのだろうか。

「全てのジャンルはマニアが潰す」発言の真意

 スターダムが事業譲渡によりブシロードグループ入りすることが発表されたのは2019年10月のことだ。2012年から新日本プロレスを保有し、その人気を高めることに成功したノウハウは、スターダムの躍進に存分に活かされることになった。

 そういう順序があるので、まずは2012年のあの発言を振り返り、考え方の根本にある大事なことを再確認するべきだろう。今でもプロレスファンの中に強烈に焼き付いている「全てのジャンルはマニアが潰す」だ。

――「全てのジャンルはマニアが潰す」という言葉が独り歩きをして、マニアはお断り、のように受け取られてしまっていることがあるので、まずは本来の意図を確認させていただけますか。

木谷:そもそも日本の商品・サービスというのは昔からロイヤルカスタマーを見がちなんです。商品・サービスというのは時代と共に変化するものですから、変化を恐れないで新しいもの、そして新しいユーザーを受け入れようとすることが大事です。「自分のものであってほしい」という気持ちが一番にあると思うのですが、求めるものというのは年代によってズレがあるものです。流行りは変遷して、映像でも音楽でもコミックでもアニメでも、変えられなかったものというのは滅びていきます。上手く生き残っているものというのは環境に合わせて変化しているもので、場合によっては新しい時代を創っていきます。

 自分にとって居心地の良い好きなもの、それが変化しようとすることを嫌だと感じるのは心情的に自然なもの。しかし気持ちそのままに排他的になってしまうと、生き残るための変化を拒絶することになってしまい、そのものが滅びることになる。

 そこで出てきたのが先の言葉だ。

木谷:言いたいことはあるだろうけど、これから新しいものを作るのを、しばらく見ていてくださいよ、と。(途中でいろいろ言いたくなるのを)あの言葉で出てこないようにしたんです。あの言葉はすごく有効だった、と思っています。

 変化することができた結果はご存じの通り。新日本は日本一のプロレス団体という立場を不動のものにした。

木谷:新日本に関しては、リングの中の基盤というのは2000年代後半から既にあったと思うんです。そこから外側も含めて洗練していったのが2012~18年ごろで、その結果が2020年の1.4と1.5でしたね。1.4は実数で4万人超え。これが1つの答えだったと思います。

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木谷高明
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