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なぜ女子プロレス団体スターダムは“日本一”集客できるのか? オーナーが明かした極意と野望〈会員数は1年半で数十倍に〉
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/09/30 11:02
(左)第13代・現ワールド・オブ・スターダムチャンピオンの林下詩美(右)第15代・現ワンダー・オブ・スターダムチャンピオンの中野たむ
週刊プロレスの見開き広告はインパクト大だった
木谷:まず初めにやったのが、週刊プロレスの最後のページの見開き広告を年間でとったことです。読めば最初に新日本の見開き広告があって、最後がスターダム。インパクトが大きいじゃないですか。これを見れば、プロレスといえば新日本かスターダムか、という構図になります。
これはプロレスファン全体へのイメージ作りであると同時に、もともといたファンに勝ち組感を与えるものでもあった。
ちゃんとした大きな団体になるのだ、という姿勢は、地下アイドル感をなくしメジャー感へと変わっていくことに欠かせないものだった。武道館大会の発表記者会見で愛川ゆず季さんが「本当にちゃんとした会社になったんだな」と感激していたように、ちゃんとしたものである、という印象は外から見る人に安心感やとっつきやすさを与える。
ライトユーザーが入ってきやすい環境を整えることができると、できるだけ多くの人に露出していくことによる効果が出てくる。
木谷:見たことのないものに行きたいとは思わないですから、YouTubeはとにかくマメに上げています。総再生数は結構多くなっていて、今は月間400万再生です。これを1000万再生にして、ユニークユーザーを50万人くらいにしたいですね。
公式チャンネルでは、お知らせや速報、過去の試合といった定番のものだけでなく、企画動画があったり、入場シーンをスマホで撮って出ししたものがあったりと、多種多様なものが日々アップされる。ファンにスターダムを毎日目にする機会を提供していると同時に、偶然興味を持って行ってみたいと思える可能性や、選択肢をスターダム1択にする可能性を高めることも担っている。チャンネル登録者数は14万人。団体公式Twitterは新日本に次いで国内プロレス団体で2位、Instagramもそうだ。動画配信サービスのスターダムワールドは会員数が1万人に近づいており、そのうちの約3分の1は海外からのもの。どの数字も順調に推移している。
“村社会化”を進めたいわけではない
一度見てくれれば、選手たちがその華やかさで、そして戦いぶりで、世界に引き込んでくれる。
そのために様々な形で、様々な場所で目に入る機会を増やしていくことが大切だった。ブシロードが展開するゲームやコミックとのタイアップ。獣神サンダー・ライガー、ミラノコレクションA.T.、中西学、小島聡、タイチなど、新日本勢とのコラボ。ブシロードグループだからこそできることのメリットを最大限に活用し、勢いを生んだ。選手の個性・キャラクターが立っていることも、メディアミックスで強みになった部分だ。
せっかく見つけて興味を持ってくれた人を繋ぎとめる工夫もしている。
木谷:ファンクラブの人数も増えました。1年半前は数百人くらいだった有料会員が数十倍になって、無料会員は1万人を超えています。無料会員がそんなに増えたのは、会員でないとチケットを買いにくくしているから(※販売システムがそうなっている)ですけど。そこで会員登録してもらえればメールで情報を配信できるじゃないですか。それが大きいんです。