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なぜ女子プロレス団体スターダムは“日本一”集客できるのか? オーナーが明かした極意と野望〈会員数は1年半で数十倍に〉
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/09/30 11:02
(左)第13代・現ワールド・オブ・スターダムチャンピオンの林下詩美(右)第15代・現ワンダー・オブ・スターダムチャンピオンの中野たむ
木谷:今はメジャー感を出すチャンスなんですよ。大阪城ホールも、コロナじゃなければ躊躇しました。でも今は、埋まっていないから不人気、とはならないですから。大阪城ホールでやった、という事実が大事なんです。
後で振り返れば、スターダムはコロナ禍において日本武道館と大阪城ホールで大会を成功させた団体となる。これは、女子プロレス団体のトップ、ということを強く印象付けるもので「勝ち組感」を生む。他と差がついたことを感じさせれば、上位寡占の流れに乗って加速度的に勢いが増し、メガコンテンツになる可能性もある。
木谷オーナーの“野望”とは
リングの中の充実度はどんどん高まっている。直近の5★STAR GPを制したのは朱里だが、岩谷麻優、林下詩美、中野たむ、スターライト・キッド、ジュリア、上谷沙弥……誰が今のトップなのかとファンに聞いてみれば、その答えはバラバラだ。誰が今一番面白いか、と聞けばそれはもっと分かれることになる。ベルトも多ければ展開も速い。地方の興行でもどんどんタイトルマッチが行われ、下の世代がトップ戦線と戦う機会も次々に回ってくる。スターダムのリングで戦うことを求めて外からやってくる選手も絶えないし、飯田沙耶や刀羅ナツコらの復帰も待ち望まれている。
世間への露出も増えている。たとえばウナギ・サヤカは、レディ・Cと共に昼の情報バラエティ番組に出ただけでなく、FRIDAYの袋とじグラビアに登場してファンを驚かせた。
9月25日の5★STAR GP最終戦、大田区総合体育館大会は1,539人の満員になった。リーグ戦と優勝決定戦という違いがあるため純粋な比較とはならないが、23、24日と同会場でG1クライマックスを開催した新日本プロレスよりも多くの観客を集めた。新日本超え、という木谷オーナーの野望は、決してリップサービスや夢物語ではないのかもしれない。
大阪城ホールに続いて、11月には川崎市とどろきアリーナ、東京代々木競技場第二体育館に初進出。12月29日には両国国技館で年末のビッグマッチを開催することも決まった。コロナ禍をチャンスに変え、成長し続けてきたスターダムは、より大きな舞台へ駆け上がろうとしている。
木谷:そう言えば、これ見ました? 最近のお気に入りなんですけど。
そう言って木谷オーナーが会長室のモニターに映したのは、先日アメリカでCMパンクがプロレスの世界に戻ってきた時の入場シーンだ。マスクをしていない満員の観客席に向かってダイブするパンクと、涙を流して心から歓喜に沸くファン。同じ時代とは思えないほどの熱狂がそこにはあった。
木谷:この熱狂、最高ですよね。
その目は既に、コロナ後の世界を見据えている。
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