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なぜ女子プロレス団体スターダムは“日本一”集客できるのか? オーナーが明かした極意と野望〈会員数は1年半で数十倍に〉
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/09/30 11:02
(左)第13代・現ワールド・オブ・スターダムチャンピオンの林下詩美(右)第15代・現ワンダー・オブ・スターダムチャンピオンの中野たむ
1つの答えが出たタイミングで、コロナ禍がやってきてしまった。
木谷:もしコロナがなかったとしても、1回立ち止まって考えるタイミングになっていたと思います。また新しい価値観を作る、というのが2020年の頭からかなと。
答えが出たら、それは変化のタイミングでもある。そうすると新しい時代を創ることができる。強制的に変化しなければならなくなってしまったのが、もともと変化のタイミングであったことと重なったのは不幸中の幸いかもしれない。
「『勝ち組感』はより大事になっている」
新日本が勢いをつけていく時に「流行っている感」という言葉が注目された。
流行っているように見せることで本当に流行ることを狙うということなのだが、たとえば巨大看板や電車へのラッピング広告のような、一般の人が多く目にするところに露出しているものは流行っているものだと認識されやすい。“マニアックなものではなく、多くの普通の人が好んでいるものなのだろう”、“広告にこんなにお金をかけることができるのは、盛り上がっているコンテンツだからだろう”と感じるからだ。不人気なものにわざわざお金を使うことはないが、流行に乗ることにお金を使うことはとてもハードルが低い。
では、それで実際に流行ったらどうなるのか。
木谷オーナーは「流行っている感」の次を「勝ち組感」という言葉で表す。“すでに仲間がいるところ・これから仲間が増えそうなところにいたい”という心理が働くと、流行を超えたメガヒットが生まれることがある。
――多数派に属していたい、という「勝ち組感」にコロナ禍での変化はありましたか?
木谷:「勝ち組感」はより大事になっていますね。アナログなものがやりにくくなり、デジタル化が一層進みましたから、差別化戦略がとりにくくなりましたね。デジタル的な差別化もできるでしょうけれど、差別化戦略ではデジタルよりもアナログ的なものが強いです。たとえばファンサービスならば、実際に握手をしたら気持ちが入るじゃないですか。
今は、アナログな形でのファンサービスをすることはできない。差別化が難しくなるとどういうことになるのだろうか。
スターダムは、そこを意識して勢いをつけていた。
木谷:デジタル化・オンライン化が進めば進むほど、よく目にするものがより強くなって、より上位寡占になるんです。スターダムは明らかにそれを意識してやりました。