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今の巨人のピンチを救えるのは、捕手・小林誠司しかいないのでは? 東京五輪優勝も“陰のMVP”は甲斐拓也だった
posted2021/09/17 12:15
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Sankei Shimbun
日本球界悲願の金メダルを獲得した東京五輪の陰のMVPは、間違いなく投手陣を引っ張った女房役のソフトバンク・甲斐拓也捕手だった。
開幕のドミニカ共和国戦。相手打線を徹底的に研究して、オープニング投手を務めたオリックス・山本由伸投手と綿密に打ち合わせをして臨んだ。
「ドミニカ戦は結構高めを使った配球でいったんです。強化試合から甲斐さんには『いつものシーズンの配球じゃなく、ドミニカ戦を想定した配球を試すよ』と言われていました」
こう振り返ったのは山本だ。
1試合をトータルで考えて、勝ち切るための配球
立ち上がり。普段とは違う国際球の扱いと、流石に極度の緊張感で制球を乱して1死一、二塁のピンチを招く。そこで4番のJ・フランシスコ内野手を外角低めの真っ直ぐで二ゴロ併殺に打ち取ると、その後は狙い通りの高めのストレートと外角へのカットボールにカーブ、フォークで5回を無失点。打たれた安打はわずかに2本で9つの三振を奪う完璧投球でリリーフ陣にバトンを繋いだ。
ところが打線もドミニカ共和国先発の巨人、C.C.メルセデス投手を打ちあぐんで大苦戦。7回には代わった阪神・青柳晃洋投手が2点を先制され、9回には広島・栗林良吏投手が1失点。初戦から絶体絶命のピンチを迎えてしまった。
最終的には9回裏に打線が奮起。5安打を集中して3点を奪いサヨナラ逆転で白星発進を決めて、金メダルへの第1歩を踏み出すことになった訳である。
ただ、この試合でマスクを被った甲斐の中では、大きな考え方の変化があったという。
それは1試合をトータルで考えて、勝ち切るためにどういう配球をしたらいいのかということだった。