猛牛のささやきBACK NUMBER
《ホームラン2本→27本》吉田正尚が不在でもオリックスには“ラオウ”がいる! 遅咲きスラッガーを覚醒させた「心の余裕」とは?
posted2021/09/18 11:04
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
KYODO
これぞ4番の仕事だ。
9月16日の楽天戦、1-1で迎えた8回表1死二塁で、オリックスの4番・杉本裕太郎は、安樂智大の149キロのストレートをバックスクリーンにたたき込んだ。値千金の決勝2点本塁打。
4連敗中のチームを救い、首位ロッテのマジック点灯を阻止して優勝戦線に踏みとどまる、大きな一打。と同時に、リーグ本塁打王争いのトップに立つ今季27号だった。
昨年最下位だったオリックスが、今年6月20日から9月5日まで首位を走り、優勝争いに加わっている要因の1つは、プロ6年目の30歳、杉本の覚醒だ。
杉本は9月16日現在、本塁打1位だけでなく、打率(.310)もリーグ4位、打点(72)も3位と、三冠王も夢ではない位置につけている。
課題だった“吉田のうしろ”
昨年までのオリックス打線は、吉田正尚1人が抜きん出た存在だった。昨年は吉田が3番で、4番はアダム・ジョーンズらが務めたが、“吉田のうしろ”が機能しなかったため、吉田が歩かされたり、四球覚悟で厳しい攻めにあった。その中で首位打者を獲得したのは見事としか言いようがないが、本塁打数や打点は伸びなかった。
今年は4番に杉本が座り、安定した結果を出し続けたことで、相手は簡単に吉田を歩かせるわけにはいかなくなった。1番・福田周平、2番・宗佑磨が作ったチャンスを、3、4番が得点につなげられるようになり、得点力が大幅にアップした。