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今の巨人のピンチを救えるのは、捕手・小林誠司しかいないのでは? 東京五輪優勝も“陰のMVP”は甲斐拓也だった
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/09/17 12:15
9月12日の広島戦でホームランを打った巨人・小林
2人は真っ直ぐに対する自信を失っている?
そうしてその後は菅野と山口の専属捕手として先発すると同時に、それまでは主に炭谷が担っていた終盤の“抑え捕手”の役割も、再び担ってきていた。
ただその間に前半戦は好調だった戸郷と高橋が壁にぶつかってしまっているのも事実だ。
1つの要因として思うのは、真っ直ぐに対する自信喪失。そこで2人とも最初から戸郷はフォーク、高橋はスライダーやチェンジアップを多投して、いきなり全てを出し切ってしまう投球が目につくようになっている。特に立ち上がりに失点するケースが目につくようになってからは、尚更、その傾向が目立つようになってしまっている。結果的にはそこを逆に狙われ、ゲームが進めば今度は配球に行き詰まってしまう。
だからこそ2人の復活には1試合をトータルで考えて、勝ち切るための配球をできる捕手が必要で、それには小林がうってつけだということだ。
断っておくが決して大城のリードがダメだということではない。
ただ、いま戸郷や高橋に必要なのは、試合前にしっかりゲームプランを話し合った上で、強引にでも引っ張ってくれる女房役だということだ。白星から遠ざかっている2人の試合を見ていると、首を振って変化球というケースが何度もあった。しかしそこで、五輪で甲斐が見せたように「言ったことはやるよ」と、真っ直ぐのサインを出し続けて、若い投手に踏ん切りをつけさせてくれる。はたまた必要ならばいきなり変化球主体のかわす投球から、ギアを入れて力の投球へと変えていく。そういうトータルで組み立てができる捕手の存在ではないだろうか。
それができるのが小林誠司だ、ということだ。
一発がなくても、小林の存在価値は高まる
9月12日の広島戦では2019年7月4日の中日戦以来、実に801日ぶりの本塁打が、好投・菅野に白星をつける決勝アーチとなった。
「少し、こういう感じ(目をこする仕草)で見ましたけどね。疑った訳じゃない。『オッ!』という感じ。打撃は悪くないんですよ、このところ」
原監督もこうおどけてみせたが、例えこんな一発がなくても、小林の存在価値は高まる。
阪神、ヤクルトと繰り広げる終盤のデッドヒート。必要なのは1試合をトータルで考え、その設計図で投手をしっかりリードできる女房役のはずだからである。
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