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<オフェンシブで勇猛果敢>新生ドイツ代表がW杯予選で3戦連続クリーンシート! フリック監督“3つのキーワード”が高める期待感
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/09/16 17:00
EUROでは早期敗退に終わったドイツ代表。15年にわたったレーブ体制が幕を閉じ、フリック新監督の下でW杯予選に臨んでいる
9月のW杯予選ではリヒテンシュタイン、アルメニア、アイスランドに3連勝。しかも、いずれもクリーンシートだった。もちろんFIFAランキングで見たらどれも勝たなければならない相手なのだが、とくにアルメニア戦とアイスランド戦ではここ最近の代表にはなかった心地よい躍動感があった。
プレスに入るタイミング、囲い込むスピード、奪った後の展開、相手守備裏へ飛び出す選手へのスルーパス、ダイレクトパスを多用したコンビネーション。そこにはフリックが求めるサッカーの片鱗が確かにあった。
ノイアーはEUROを制したイタリアを手本に挙げる
「準備期間は少なかったが、チームは自分たちがどんなサッカーをしたいのかというのを素晴らしく実践してくれた。ただ、もっと貪欲にならなければならない。ゴールをもっと奪うためにも。ピッチ上に躍動感を求めている。高い頻度でボールを奪い取りゴールへの最短距離で攻めたい」
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フリックは、3試合をこのように振り返っている。リヒテンシュタイン、アルメニア、アイスランドに快勝したから大丈夫だとは思っていない。選手だってファンだってそうだ。大勝の記録だけなら、レーブ政権の終盤にだってあった。
EURO直前のラトビア戦は7-1の快勝だった。CLに出ている選手がほとんどのドイツ代表と、ほとんどがセミプロで、スイス4部でもポジションを確保できない選手ですらスタメンで起用されているリヒテンシュタインが試合をしたら、前者が勝つのは当然だ。
イングランド、イタリア、フランスといった強国相手にフリックのサッカーがどこまで通用するかはわからない。22年のカタールW杯までにチームをどこまで成熟させられるか。その答えが出るのはまだ先だろう。
とはいえ、負けるにしても納得のいく負け方というものもあるはずだ。100%の力を発揮し、それでも負けたのなら、少なからず受け入れることができる。
キャプテンのマヌエル・ノイアーは「チームとしての躍動感があったし、一丸となってチームプレーをしていた。見ていて楽しかった。僕たちもああならなければならない」と、EUROで優勝したイタリアを手本として挙げていた。
自分たちの強みを最大限に引き出しつつ相手の弱点を突くためには、どんな取り組みをしたらいいのだろう?
フリックなら正しい道を示してくれる――。新生ドイツ代表が見せたサッカーには、この期待感を信じていいと思えるだけのメッセージが込められていた。新しいスタートを切ったドイツ代表において、いまはそれが何より大切なのかもしれない。