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<オフェンシブで勇猛果敢>新生ドイツ代表がW杯予選で3戦連続クリーンシート! フリック監督“3つのキーワード”が高める期待感 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2021/09/16 17:00

<オフェンシブで勇猛果敢>新生ドイツ代表がW杯予選で3戦連続クリーンシート! フリック監督“3つのキーワード”が高める期待感<Number Web> photograph by Getty Images

EUROでは早期敗退に終わったドイツ代表。15年にわたったレーブ体制が幕を閉じ、フリック新監督の下でW杯予選に臨んでいる

ファンが待望したオフェンシブで勇猛果敢なサッカー

 ドイツ人は元来ダイナミックなサッカーが好みだ。ボールを持ったら積極的にゴールへ向かい、勇敢に攻撃を仕掛けたいという思いがある。プレー選択コマンドに「じっくりいこう」と「強引な突破」があったら、たぶん後者を選ぶ人のほうが多い。だから、じっくりとボールを回しながら相手のほころびを作り出し、緻密なコンビネーションで攻略するサッカーは、ファンからすれば、歯がゆさを感じたりもする。

 もちろん、それだけじゃダメなこともわかっている。縦にドーンと蹴るだけではうまくいかず、面白くないことも知っている。ボールを大事にするのは当然だ。だから育成レベルでは、じっくりとビルドアップすることを大切にしている。

 とはいえ、「じっくりいこう」の頻度が高すぎたら、いつまでもゴールは生まれない。ゴールへ向かい続ける、後ろ髪をひかれないプレーにドイツ人たちは魅力を感じているし、ボールロストを恐がってチャレンジしないプレーは納得いかないわけだ。

 レーブ時代、ポゼッション主体のサッカーは結果を出していたからこそ説得力があった。強い時期はボールを保持しながらも常にゴールを強襲する姿勢を見せていたし、そのための術もあった。また、それを実現できるハイレベルな選手たちが揃っていた。

 現在も、ポゼッションスタイルを機能させる能力を持った選手がいないわけではない。

 ただし、勝てなくなると不安や不信感が生まれてくる。各国の対策が進み、守備組織がどんどん強固になってきているとはいえ、待てども待てどもチャンスが訪れなければやきもきしてしまう。

 レーブもロシアW杯後にプレースタイルを変化させるべく様々な試みをしたが、コロナ禍の影響でチーム作りが進まなかったこともあり、志半ばで代表を離れることになった。

 だからこそ、バイエルンで6冠を達成したフリックが志向するオフェンシブで勇猛果敢なサッカーは、ファンにとって「待ってました!」のスタイルだった。

最近の代表にはない心地よい躍動感があった

「スピード、インテンシティ、アクティビティ」

フリックはこの3つをキーワードに挙げており、公開練習からその方向性が強調されたトレーニングが組まれていた。

アシスタントコーチに抜擢したのは32歳のダニー・レール。ドイツでモダンサッカーの父とされるラルフ・ラングニックの教え子で、バイエルン時代にもアシスタントコーチを任せたレールとは、堅い信頼関係で結ばれている。フリックサッカーを具現化するための大事な右腕だ。

レールは言う。

「選手の視線を常にゴールへ向けられるようにしたい。そのためには勇気も不可欠な要素だ」

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