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「僕がいなくても困らないと思う。ただ…」栗山監督が絶賛する“スーパーサブ”谷内亮太…“失策ゼロ”の原点「ヤクルト時代の金言」とは 

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2021/09/12 11:03

「僕がいなくても困らないと思う。ただ…」栗山監督が絶賛する“スーパーサブ”谷内亮太…“失策ゼロ”の原点「ヤクルト時代の金言」とは<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

18年12月にトレードで日本ハムファイターズへ加入。内野ならどこでも守れる器用さで栗山監督の信頼を勝ち取っている

 試合直前。その日の先発メンバー、打順などの情報を得て、自ら投入される守備位置や機会、タイミングを想定して脳内でイメージする。守備固めなど途中出場の出番は、ナイターであれば試合中盤、午後8時以降の出場が大半。そのため「1回から5回くらいまでは、ボーっとするような感じ」と、あえてスイッチをオフにするという。出番を待つ中継ぎ投手陣と似通った、1日の波を作るのである。

 ベンチから戦況を見ながら「このタイミングなら仕掛けてきそうとか、この流れだとこのポジションが交代でとか……。仕掛ける時を、考えています」と、自身が起用されそうな場面の先読みを本格的に行う。おもむろに、自分の意思で体を温め始める。

「コーチに『谷内、次いくぞ』と言われた時に『はい』と。求められた時に、準備ができていることが理想」

 指令とのタイミングが合致した時が、ささやかな喜びを得る瞬間だという。

「プロ野球選手だったら、本気を出せば僕のようなことはできるとは思います。だから、やっていることはそれほどでもない、過大評価されているところはある。ただ何が何でもレギュラーという気持ちが少しずつなくなっていく中で『どうしたら、プロで生き残っていけるか』ということは考えてはきました」

 生きる道を今、見つけたのである。

圧倒された宮本の守備、土橋コーチの金言

 プロ入り後から胸に刻む信念が、バックボーンにある。スワローズに2012年のドラフト6位で入団。国学院大では主将も務め、即戦力と期待されていた。ルーキーながら春季キャンプで一軍に抜てきされたが、すぐに衝撃を受けた。同じ遊撃には名手のレジェンド、宮本慎也氏がいた。同年限りで引退するベテランに圧倒された。

「何もミスをしない。お手本のようなプレーばかりで。プロのレベルは高いと思いました」

 開幕一軍には滑り込んだが、すぐに二軍落ち。ファームで出会ったのがスワローズの土橋勝征二軍育成チーフコーチである。当時は二軍内野守備コーチ。授かったシンプルな金言が、原点にある。

「とにかく謙虚にやりなさい」

 ヤクルト黄金期の現役時代、個性派のスター選手がひしめく中で堅実なプレーで一時代を築いた。その恩師の言葉とともに、ここまで歩んできた。

「ゴミに気付いたのにスルーして拾わなかったりすると、何か悪いことが起きそうな気がして。日常生活は、野球に影響すると思っています」

 道端に落ちているゴミが目に入り、気になると拾って処分する。飛行機や新幹線の移動時に隣の席が埋まっていると、その乗客側の肘掛けは遠慮して使えない。元々の性分も相まって、ユニホームを脱いでも「謙虚」を貫くことが、習慣になった。

【次ページ】 「謙虚にやる」を追求して9年目

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