潔い覚悟を秘め、難役と向き合っている。谷内選手は、こう自らを客観視している。

「正直、僕がいなくても困らないと思う。いたら助かるな、というくらい。ただ試合に出させてもらっているからには、期待には応えたい。そこだけは、あります。自分の活路を見出しています」

　形勢逆転、局面打開を期待される代打や代走とは趣が違う。守備固めの第一義は、ミスをしないことである。優位、または緊迫した試合の流れを維持して白星へつなげる。終盤勝負へと持ち込むことが使命になる。

　東京ヤクルトスワローズからファイターズへと移籍して3年目。いまだ無失策を継続している。守備率100％を死守しているのである。凡打を正確に処理してアウトにすることが、ごく当たり前に求められる。失敗が許されない場面で、試合状況に則したポジションへと送り出される。

「正直、打球が『飛んでくるな』と思います。失うことの方が多い立場ですから。信頼を得るには長い時間、積み重ねが必要ですけれど、それを失ってしまうのは一瞬ですから」

2018年12月に秋吉亮（右）とともに日本ハムへトレードでやってきた谷内亮太　©︎KYODO

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練習で一度ピークを作る

　オンリーワンの役回りを遂げるため、入念なルーティンを課す。事前に想定が難しく、与えてもらえるかどうかも見通せない出場機会。毎試合、妥協なく備えをしている。ホームゲームの午後6時開始のナイターを一例とすると、午前11時30分までに球場入り。その後、肉体と向き合う。ストレッチなどで1時間ほどセルフケアに充ててから1日をスタートする。昨年12月に椎間板ヘルニアの手術をして一時、選手生命の危機に直面したこともあり、意識はさらに高くなった。

　その後は、個人でブルペンでの打撃練習。74試合出場時点で20打席未満だが、スイングのチェックも怠らない。その後、午後2時過ぎにチームの全体練習へと突入する。約1時間30分。レギュラークラスの選手とは、ウエートの置き方がやや異なる。コンディションに合わせて軽めにするなど強弱をつける主力やベテランとは違い、練習で一度ピークを作るという。

「全体練習の時は目いっぱい、100％でやっています。そこで、すべて出し切るようにする。シーズン中は常に不安しかない。その不安を少しでもなくしてから試合に入っていきたい。日によって感覚が良くないとかあるので。そんな不安をなくすために思い切りやっています」

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