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「僕がいなくても困らないと思う。ただ…」栗山監督が絶賛する“スーパーサブ”谷内亮太…“失策ゼロ”の原点「ヤクルト時代の金言」とは
posted2021/09/12 11:03
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph by
NIKKAN SPORTS
通路が、走路と化す。札幌ドームのバックヤードにある広報室に面した直線約50メートルの廊下に試合中、適時を見定めた主が姿を現す。手狭なスペースの硬度ある床を活用しての簡易なウォーミングアップが始まる。
試合展開を映し出すモニターに目をやりながら、一心不乱にダッシュを繰り返している。
クラブハウスからグラウンドや三塁側ベンチ、食堂へと選手が行き交うその1本の動線から、その足音が耳に届く。きしむような響きを奏でるのは北海道日本ハムファイターズの内野のスーパーサブ、谷内亮太選手である。
試合終盤に差し掛かる局面、試合展開によってタイミングは日々微妙に異なり、その加減が絶妙でもある。それが、試合の要所が近いと知るアラームになる。
出場74試合で先発は2試合、内野ならどこでも
プロ9年目の今季、境地を確立した。9月8日に通算300試合出場の節目に到達。11日現在、キャリアハイの74試合に出場している。その内訳が一軍に定着している選手としては異質である。先発出場は2試合のみ。ほか72試合が途中出場、守備固めの起用が主となる。
さらに滋味深いのが詳細である。三塁手としての40試合が最多だが、それを含めて一塁、二塁、遊撃と内野手としての4ポジションすべてで10試合以上出場を果たしているのである。谷内選手のタイプとしては、一定のレベルで一塁手まで担うケースはレアである。
9月5日、千葉ロッテマリーンズとの試合前。ZOZOマリンスタジアムで陽光を浴びながら、用兵の全権を持つ栗山英樹監督が報道陣へ取材対応していた時のことだった。突如、自ら切り出した。
「谷内をクローズアップしたら。内野を全部、完璧にできる選手は初めて見た。ポジションを1つや2つならできる選手はいるし、いたけれどさ。いないよ、あんな選手は……」
現役時代に外野のユーティリティー選手として鳴らした10年目の指揮官が最敬礼する価値を放っている。