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「完全に無音の中を走っています」《金メダル》パラ陸上・佐藤友祈が稲垣吾郎に語っていたレース中の“境地”
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/08/28 11:00
<左から>走り高跳び(T64)で悲願のメダル獲得を目指す鈴木徹、陸上男子400m(T52)で金メダルを獲得した佐藤友祈、同5000m(T11)で銅メダルを獲得した和田伸也
1回の失敗を引きずらないように
稲垣 無の境地は再現できませんよね。鈴木選手はトラック種目とはまた違う緊張感がある気がします。
鈴木 高跳びは待ち時間が長いので、1人でいると物凄く退屈なんですよ(笑)。だから海外の選手とよく話をしています。高跳びは試技をパスすることも可能なので、自分の順番があとどれくらいで回ってくるかを探ったり、気分転換をするために「どこから来たの?」「今日何食べた?」とか、あまり興味はなくても積極的に会話するようにしています。それがリラックスにつながり、緊張感をコントロールしている面もあるはずです。跳ぶときにも切り替えて集中するということはなくて、いい意味で「普通」にやることを大事にしています。
稲垣 あ、僕が好きなゴルフに似ているかもしれません。打つのは一瞬で、待っていたり、歩いたりする時間が長い。
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鈴木 ゴルフも考えすぎるとダメですよね。あと、切り替えが大事なのも似ている。高跳びは2回まで失敗できるので、1回の失敗を引きずらないようにしないといけない。
和田 ブラインドの場合は、走るだけでなく音にも集中していなければならないので、長時間、集中力を継続するためのコンディション作りが大事になってきます。
稲垣 確かに耳が頼りですもんね。
和田 マラソンとトラックでは少し違いますが、疲れが溜まると集中力が落ちる。ですからレースが近づいてくるとトレーニング量を落とし、肉体だけではなくてメンタルもいい状態にしないといけません。
ファンの方に注目してほしい点
稲垣 本当に三者三様ですよね。東京パラのチケットは第一次の申込みで買えなかった人が出ているくらい注目度が高い。ファンの方に、どこに注目してほしいですか?
和田 勝負所の駆け引きですね。特にレース終盤はガイドランナーからの声掛けが多くなってくるのが画面からも分かると思いますし、その声によって選手の動きが変わることにも注目して欲しい。またガイドランナー同士のプレッシャーの掛け合いも面白いと思います。彼らがどこを見て、どのタイミングで僕ら選手に声をかけているか、二人三脚で走る姿に注目してほしいです。目標は内定した1500mと今世界ランク1位の5000mのメダルです。
鈴木 高跳びは、バーが落ちるか落ちないか、というシンプルなスリルを楽しんでほしいですね。あとは今、下肢障害の走り高跳びでは、義足でメダルを狙えるのは世界中で僕ぐらいなんです。他は脚に麻痺が残っている機能障害の選手ばかりなので、条件が違う中でも立ち向かっていく姿を見てほしいですね(笑)。
稲垣 おお、格好いい!