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「完全に無音の中を走っています」《金メダル》パラ陸上・佐藤友祈が稲垣吾郎に語っていたレース中の“境地”
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/08/28 11:00
<左から>走り高跳び(T64)で悲願のメダル獲得を目指す鈴木徹、陸上男子400m(T52)で金メダルを獲得した佐藤友祈、同5000m(T11)で銅メダルを獲得した和田伸也
内定を手にしたアドバンテージ
稲垣 お話を聞いていると、選手は大変だと思うのですが、見ている側としてはクラス分けの難しさもパラの“特色”なのかなと思うようになってきました。ちなみに陸上では今回内定が出なかった選手にも、まだ出場のチャンスはあるんですか?
佐藤 2020年の4月1日までに世界ランキング6位以内にいれば出場権を獲得できます。でも、それまで海外の競技会に出たり、3月の国内大会にピークを持ってこないといけない。仮にそこで出場を決めたとしても、数カ月後にはパラリンピック本番が来てしまうので……。
鈴木 何度もピーキングをするのはアスリートにとってとても難しいこと。内定した僕らはコンディションの“山”に2つ登らなくて済むのですが、それだけでも大きなアドバンテージになります。
和田 それに本番に向けて、落ち着いてトレーニングできるのは大きいです。今大会、1500mで0.07秒差で4位に入ることができましたが、この0.07秒はタイム以上に価値があると自分でも感じます。
パラリンピックと暑さの関係
稲垣 オリンピックではマラソンなどで暑さが注目されていますが、パラリンピックの場合はどうなんでしょう?
佐藤 障がいによって、体温調節がうまくいかない選手もいて、健常者以上に暑さの影響、危険性は大きいと思います。オリンピックのあと、8月末からとはいえ今年の気温を考えると気温は高いですよね。
鈴木 ただこの高温多湿の気候に慣れているのは、日本人選手にとってはアドバンテージでもある。ドバイも暑かったけれど湿度が低かったし、東京とは違う。海外の選手はあきらめるんじゃないですか(笑)。
和田 冗談ではなくそう思います。私は暑いのが大好きなんで、勢いでは走れない5000mやマラソンはチャンスかな、と。
鈴木 ただチームスポーツと違って個人競技なので、コンディション不良になったときには替えがききませんから、暑さ対策も含めてコンディショニングがとても大切になってきます。
稲垣 3人は後天的に障がいを抱えられたと伺いましたが、もともとスポーツはされていたんですか?
佐藤 小学校のころはサッカーをやってました。でも父がレスリングで国体選手だったこともあり、レスリングやキックボクシングもやっていて。