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21歳田中希実、19歳三浦龍司、20歳廣中璃梨佳…なぜ東京五輪で“陸上界のZ世代”は躍進できたのか?
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byGetty Images
posted2021/08/25 11:03
メダルラッシュに沸いた東京五輪。陸上競技に注目すると、Z世代の活躍が光っていた
さらに決勝でも圧巻の走りを見せる。序盤から先頭集団に食らいつき、未知のペースを経験。残り1周で引き離されたが、粘り抜いて、8位でゴールへ。再び3分台(59秒95)をマークして、今度は“入賞”を勝ち取った。女子中距離としては93年ぶりの入賞だった。
三浦は「サンショーは自分の個性を出せる唯一の種目。自分の持っている力を出し切るまで向き合っていきたい」と3000m障害で戦う決心を固めた。廣中は「東京五輪が1年延期したからこそ2種目の挑戦ができた」と話しており、田中は、「こんなに早く4分を切れるとは思っていなかったので、自分のなかの常識を覆すことができました」と語っている。
東京五輪の1年延期が3人の人生を変えたと言っていいだろう。
3選手に共通する“Z世代が生んだメンタリティ”
Z世代は、小さな頃からデジタル機器に触れ、日常的に利用してきた「デジタルネイティブ世代」だ。ブランド品を好むわけではなく、「自分らしさを大事にしたいと思っている」世代だと言われている。
3人の共通点は世界の舞台でもひるむことなく、「自分のやりたいレース」を実践し、ともにトップを引っ張るという貴重な経験をしたことだ。それは無謀なものではなく、自分たちの特性を生かすための戦略だった。さらに過去の日本勢とは異なり、ラスト勝負でも強さを見せた。
Z世代が生んだメンタリティが今回の好結果につながっているのかもしれない。
そして彼らにプラスなのが、東京五輪が1年延期したことで、2022年にユージン世界選手権、2023年にブダペスト世界選手権、2024年にパリ五輪と4年連続で世界大会を戦うチャンスに恵まれたことだ。しかも、ただ出場するだけではなく、決勝の舞台で世界のトップと真剣勝負できる実力をすでに備えているのが大きい。