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「大治郎さんの言葉の意味がわかってきた」Moto2で初表彰台2位を獲得した小椋藍の、加藤大治郎を彷彿させる才能とは 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2021/08/20 06:01

「大治郎さんの言葉の意味がわかってきた」Moto2で初表彰台2位を獲得した小椋藍の、加藤大治郎を彷彿させる才能とは<Number Web> photograph by Satoshi Endo

Moto2昇格後11レース目にして初めて表彰台に上った小椋。頂点もしっかりと視野に入れている

「藍はグリッドですごく緊張しているけれど、大ちゃん(故・加藤大治郎)はいつも緊張しないって言っていたよ。どうして?って聞いたら、だって、やれることしかできないじゃないですかというんだよね」

 そんな僕の問いかけに、小椋はこう答えてくれたのだ。

「Moto3は、優勝したライダーが次のレースでポイントが取れなかったりすることもある。いろんなことに影響される状況で、自分ができることしかできないって言える大治郎さんはすごいなあってずっと思っていた。やっぱり僕はグリッドでは、緊張感をもっていないとだめだったから。でも、Moto2を戦うようになってから、大治郎さんの言葉の意味がちょっとわかってきたような気がする。それが正しいのかどうかはわからないけど、大きいバイクになればなるほど、自分が積み上げてきたことしかできない。きっと、大治郎さんが言いたかったのは、そういうことなんじゃないかなって……」

加藤大治郎の名言に宿る天才性

 そのときに僕は、2003年の日本GPで亡くなった天才ライダー加藤大治郎の言葉を、彼が実にわかりやすい言葉で説明してくれたような気がしたのだ。

「大治郎さんが亡くなったのは僕が2歳のとき。僕は大治郎さんのことは映像でしか知らないけれど、僕にとって、そして日本人にとって、大治郎さんは永遠のチャンピオンだから」

 僕が小椋に伝えてきた大ちゃんの名言はたくさんある。例えば「あなたにとって限界は?」「100%とはなに?」……そういった問いかけに対する、大ちゃんのシンプルな答えだ。

 近い将来、表彰台の頂点に立つとき、大ちゃんが遺した言葉を小椋はどう表現するだろうか。少なくとも今大会、小椋は大ちゃんの言葉を自分の言葉に置き換えた。その分だけ彼は進化し、彼のレーシングスーツに縫い付けられた大ちゃんの永久欠番「74」に一歩近づいた。これからの成長と進化にますます期待するばかりである。

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