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「大治郎さんの言葉の意味がわかってきた」Moto2で初表彰台2位を獲得した小椋藍の、加藤大治郎を彷彿させる才能とは
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2021/08/20 06:01
Moto2昇格後11レース目にして初めて表彰台に上った小椋。頂点もしっかりと視野に入れている
Moto2クラスは、2010年に2ストローク250ccに代わってスタート。4ストローク600ccのホンダ製オフィシャルエンジンを搭載するコンストラクターの戦いとなり、19年からはオフィシャルエンジンがトライアンフの3気筒765ccに変更。現在参戦しているコンストラクターは、カレックス、ボスコスクーロ、NTS、MVアグスタの4社で、カレックスがシェアをほぼ独占。事実上ワンメイクの戦いといえる状態で、おのずとタイムが接近する。シーズンを通してもっともアベレージスピードの高いレッドブル・リンクにおいて、オーストリアGPのフリー走行では、トップから1秒差に31台中22台という大接戦となった。そして、予選でフロントローに並んだ3選手の差は、わずか0.143秒という僅差だった。
1ラップ0.5秒の遅れが致命的
こうした状況は他のサーキットでもほとんど変わらない。毎戦、1000分の数秒差でグリッドは決まるが、その差を小椋はどう実感しているのだろうか。
「いまのMoto2で0.1秒差はかなり大きい。ベストで0.5秒離れたら大差。1秒なんてとても勝負できるレベルではない。レースで戦える、勝負できそうかなというタイム差は、0.2秒か0.3秒が限界だと思う」
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4ストローク250cc単気筒エンジンを搭載するMoto3も大接戦のクラスだが、Moto3とMoto2の違いについては、こう語ってくれた。
「Moto3は、自分のスキル、マシンの状態の他に、混戦の中でのスリップの使い合いや駆け引きなど、自分ではどうにも出来ないことに影響されることが多い。それにくらべてMoto2クラスは、フリー走行、予選と積み上げてきたものを決勝でしっかり出せる。だからこそレース展開をだいたい予想できる。それがMoto3との決定的な違いですね」
Moto2とMoto3のタイヤ性能の違い、セッションの進め方の違いなどについても、彼は実にわかりやすく、説得力のある言葉で語ってくれた。これまでMoto2とMoto3の違いを、これほど明解に語ってくれた選手はいなかった。
小椋の興味深い言葉をもうひとつ紹介しておきたい。それは、僕が小椋に話した過去の偉大なライダーの言葉についてのやりとりだ。