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プロ野球スカウト「このままいけば彼は指名されますよ」甲子園で見ておくべき“7人のピッチャー”《明桜の風間球打だけじゃない》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2021/08/20 17:04
夏の甲子園で大きな注目が集まる明桜高・風間球打(3年・183cm81kg・右投左打)
二松学舎・秋山正雲を、並の小柄な左腕だと思ったら、痛い目に遭う。
半身の姿勢を踏み込んでから一気に切り返す投球フォームはリリースが見にくく、リリースポイントが打者寄りだから球持ちがよく、アベレージ130キロ後半でも差し込まれる。
本質は立派な「快速球左腕」だ。ピンチになるほど、オレに任せとけ!の「男前」な投げっぷり。雨が続いて、初戦がずれ込んだ。西日本短大付相手に、早く投げたくて、投げたくて、ウズウズしていたことだろう。
この夏の予選の最中、ちょっと興味深い記事に出会った。
大阪桐蔭の大型左腕・松浦慶斗の速球の握りがちょっと特殊で、本来スピードの出にくい握りで投げていて、回転軸も真横より若干傾いてスライダーっぽい回転になっているという。なのに、スピードはアベレージ140キロ台。ならば、リリースの瞬間に、人差し指と中指の2本で上からズバッとボールを切ったら、どんな剛速球になるのか……夢のある記事だったし、今は投球フォームの映像から、変則の握りまで解析してしまうのかと、驚きもした。
投手というのはデリケートなもので、たとえばテークバックをわずかにマイナーチェンジしただけで、フォーム全体のバランスがわからなくなったりするそうだ。もっと繊細な投手になると、朝、目が覚めた時、今日も昨日と同じフォームで投げられるのか……と毎日不安でしょうがないという。
野球には数えきれないほどの技術書があるように、「理論」の追求がなされている一方で、個人の「感覚」に負う部分もすごく大きい。今大会、松浦の速球の回転がどのように見えるのか……見逃せない(初戦は東海大菅生に7-4で勝利)。
高知県予選・決勝で、宿敵・森木大智投手(高知高)を向こうにまわして、「あいつより先に降りるものか!」と、激戦の9イニングを投げきってみせた明徳義塾・代木大和。
去年の今ごろは、これといった勝負球が見当たらなかったこの長身左腕が、カットボールという「切り札」を獲得し、それが実戦でのメンタリティに強靭な「芯」を植えつけたように見える。
併せて、是非注目していただきたいのが、代木の「バッティング」だ。
この春のセンバツ、振り抜いて右中間最深部へ、あわや……の雄大な放物線と、美しさすら感じる全身連動のしなやかなスイングスタイル。「二刀流」などと軽率な表現は使わないが、その気で振り込んだら、プロでもかなりのスラッガーになれる――打席の左右は違うが、今季オリックスの4番に定着した杉本裕太郎選手の青山学院大当時のスイングと重ねながら、そんな予感がしている(初戦は県岐阜商に3-2で勝利)。