甲子園の風BACK NUMBER
<今年の注目応援曲は?>ブラバンの生音が甲子園に帰ってくる! 「結露水は厳重に管理」「譜面台は共有しない」制約を守りながらだけど
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2021/08/09 11:02
2019年夏、アルプススタンドで”魔曲”を演奏する智弁和歌山高校吹奏楽部
4年ぶりの出場となる明桜(秋田)は、新曲を用意。イギリスのプログレッシブバンド、キング・クリムゾンの名作『21世紀のスキッツォイド・マン』を、『革新』という名称で使用する。この曲を野球応援に選んできたセンスに、思わずうなった。
前橋育英(群馬)は、疾走感溢れるオリジナル曲『RUN and GO』が名物。アルプススタンドの下段に、グロッケンシュピール(鉄琴)をずらりと並べるのも特徴で、灼熱の甲子園に風鈴のような涼しげな音色が響き渡るはずだ。
2020年に共学化してから初の甲子園出場となる横浜(神奈川)は、これまでの応援から一変。男子校時代は硬派な応援団と、男らしく勢いのあるパワフルな演奏が印象的だったが、共学になりチアリーディング部が誕生。吹奏楽部にも「甲子園で応援したい!」という女子生徒が大勢入部し、これまでに見たことのない光景が広がるだろう。
4大会連続出場の高岡商(富山)の名物といえば、『ザ・ホース』。スピード感あふれる曲にのせ、マーチングのキビキビとした動きを取り入れるのが特徴だが、今大会では演奏しながらのアクションが禁止されているため、アルプススタンドで吹く場合も、静止しての演奏となる。
6年ぶりの出場となる専大松戸(千葉)は、押しも押されもせぬスウィング・ジャズのスタンダード・ナンバー『SING SING SING』が名物。映画「スウィングガールズ」にも登場した名曲で、アルプススタンドを盛り上げる。
浦和学院(埼玉)の応援といえば、何といっても『浦学サンバ』。今夏限りでの退任が決まっている野球部監督の森士氏が1991年に就任した際、当時の吹奏楽部顧問に「俺は野球部を変えるから、お前は応援を変えてくれ」と依頼し、誕生したオリジナル曲だ。底抜けに明るいサンバのリズムで、無観客の甲子園に彩りを添える。
智弁和歌山の“魔曲”も
智弁学園(奈良)は、35年ほど前に使っていたオリジナル曲『7番』を復活させる。同校の卒業生で、応援団とチアリーダーの夫婦から「何としても復活を」という強い要望があり、復活を決めたという。
高校野球ファンの間で“魔曲”として知られる、智弁和歌山(和歌山)のチャンステーマ『ジョックロック』。この曲を流すタイミングは、応援団の顧問を務める坂上寿英氏の手に委ねられている。「チャンスになってから」ではなく、「チャンスになりそうな時」を見計らって指示を出すため、いつ流れるかを予想しながら試合を見守りたい。
3年前に応援曲をフルリニューアルしたのは、近江(滋賀)。ファレル・ウィリアムズの『Happy』や、テイラー・スウィフトの『Shake It Off』など、すべて洋楽という変わり種で、ランナーが2塁に進むと流れるチャンステーマ『Fireball』(ピットブル)が早くも名物に。ラップ部分に「今日の主役はどこですか?」「近江高校!」という歌詞をあてはめ、「コール&レスポンス」という斬新な応援スタイルを生み出した。今大会は、応援席で声を出しての応援は出来ないため、テレビの前でコール&レスポンスを楽しみたい。
久々に生音が返ってくる甲子園。感染対策を徹底しながら演奏する、吹奏楽部の“音楽の力”で選手を後押しし、熱い戦いが繰り広げられることを期待している。