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オシムが語った東京五輪U-24日本代表の論点「日本もスペインと同じものを持っている。だが残念なことに、いく人かの選手が…」 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2021/08/06 16:46

オシムが語った東京五輪U-24日本代表の論点「日本もスペインと同じものを持っている。だが残念なことに、いく人かの選手が…」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

2006年、日本代表監督時代のオシム

――たしかに進化は遂げています。

「私自身がもっとコンビネーションを突き詰めるべきだった(註:現役当時のことか監督としてか確認できなかった)。得点の機会をひとりで作り出すのは難しい。プレーの目的はあくまでゴールだ。サッカーとはそういうもので、残念ながら美しさを求めてプレーしているのではない。

 スペインが示したのは、いかに耐えるかということだった。耐えて効率的にプレーする。それだけだ。効率的であれば、走ることもできる。アグレッシブに戦い、パスを多用できる。

 ひとつ言いたいのは、それらに関して日本もスペインと同じものを持っているということだ。フィジカルでは大きく進歩した。技術的にも必要なものを備えている。だが残念なことに、いく人かの選手が個人プレーに走った。

 もちろんそれは普通のことでもある。というのもサッカーでは金が大事で、選手はできるだけ早く多くの金を得ようとするからだ。金や快適な人生を……。君には何度も言ってきたが」

――日本の選手は、あまりそんな風には考えていないようにも思いますが。

君たちは満足すればいい。常に進歩は可能だ

「個人的には、私は自分が見たものに満足している。日本というチームも、その技術や戦術もうまくいっている。その点では素晴らしいものをたくさん見ることができた。パスやコンビネーションについてもだ。だがアグレッシブさはなかった。

 ゴールという名のたしかな目的がある。そしてゴールをあげるには、そのためにプレーしなければならない。

 それからいずれにせよ祝福はしたい。最高級のスペクタクルではなかったが、満足いくものではあった」

――いい試合であったのは間違いないのではありませんか?

「君たちは満足すればいい。常に進歩は可能だ。とりわけ個人のテクニックやデュエルなどについてはそうだ。

 繰り返すが忘れてはならないのは、サッカーはコレクティブな競技であることだ。すべてはそこから始まる。だからこそ個人主義者には注意する。

 妻と代わる。サリュ。みなさんによろしく」

――メルシー、イバン。

 スペイン戦まで五輪での日本男子の試合を見ていなかったオシムだが、次の3位決定戦も自宅でテレビ観戦するという。メダルを目指して現実的に戦いながらチームや選手も進化させる森保のメソッドを、彼がどう評価するかはとても興味深い。

【前回を読む】オシムが語った日本対スペインの論点「日本は簡単にボールを失い、それぞれがひとりでプレーした」

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